祈るよりも早く





彼と連絡が取れなくなってもうそろそろ一年が経つ。幼馴染である私達を置いてポケモン達を連れ旅立ってしまった。それから私達三人の関係はおかしくなった。いつも競い合っていたライバルではあったが、幼い頃から一緒にいた親友でもあった。今ではもう一人の彼と関わることも少なくなり、私は一人で彼の帰りを待つことしか出来ない。
私のそばですやすやと寝ているイーブイを撫でる。きっとこの子もみんなでバトルをした昔のことを懐かしんで、それが出来ない今を悲しんでいることだろう。私もイーブイの傍で目を閉じた。暖かな春の日差しに誘われて闇へと落ちていく。それが現実から逃れる唯一の方法だった。


「本当に行ってしまうの?」
「うん。おれは強くなりたいんだ」

一年前のあの日の会話を思い出す。
私は彼を見送りに来ていた。知らせが来た時は旅から帰ったばかりだというのに、とかなりショックを受けたものだ。勿論落ち込んでいる暇などはなく、きのみ屋を営む両親の手伝いもあって忙しく時間は過ぎていく。
頑張ってね、向こうでも元気にね、応援してるよ。そんなポジティブな言葉を発する勇気は無かった。多分私たちを悲しませない為、彼は1人で旅をすることを黙っていたのだろう。見送りの時彼も何も言わなかった。それでも私は裏切られたとしか思えなかった。
勿論、なんで相談してくれなかったのかと問い詰める勇気もない。彼の夢を奪う責任を負えるほど私は強くない。

「凪紗…?!」

彼の胸に思いきり飛びついた。ふんわりと心地よい石鹸の香りに包まれる。
それから一度深呼吸をして顔を上げた。

「さようなら、レッド……」
「……ありがとう」

彼は優しく微笑んだが瞳の奥には冷たい何かが見える。そのまま私はゆっくり手を離して決意した。どんなに納得がいかなくても、今更引き止めることは出来ないから……精一杯、彼を送り出した。振り向いて歩き出した彼は立派に見えた。彼から感じた強い決意。それは、まるでこの町に…私の元に戻って来てくれる可能性がゼロにも等しいことを示しているようだった。

一人の少年が出ていった後の町には、いつも寂しげな少女の姿がある。







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