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待ち合わせ場所につくと千歳君はすでに待っていて、失礼ながらにも意外だなと思ってしまった。


「千歳君おはよう」

「おはよう」

じゃあ行くばい、そう言って自然と私の手をとる。あまりに自然だったもので、抵抗もできずただ握られているしかなかった。特に何をするわけでもなく、ぽつぽつと会話を楽しみながら散策をした。途中で見つけた自然いっぱいの大きな公園に入りベンチで少し休憩。

「日差しが気持ち良か〜」

「せやね、ここで寝たら気持ち良いやろうね」

なんとなく目的もなくただ歩き回るだけで、会話も常にしているわけではないけれども。私にとってはとても心地よく楽しい時間となった。



日差しがあまりにも気持ちよくて、うっかり二人して寝てしまっていたらしい。ふと目覚めると、千歳君がこちらにもたれかかって眠っている。いつしか同じようなことがあったなと笑ってしまった。私が動いたので千歳君もまだ眠たげに起きる。

「寝とった」

「うちも今起きてん」

「肌寒うなってきたし、帰ろうか」

「せやね、そろそろ夕飯の時間やしな」

千歳君はすっと立ち上がると手を差し出してきた。私は戸惑いぎみにその手をとりベンチから離れる。また当たり前のように手を握りなおし歩きだした。

「家どこ、送る」

まだ一緒にいたかったので甘えることにする。こんなことをされると期待してしまう。あれは夢ではなかったんだと、千歳君も私のことが好きなんだと。

でも聞く勇気なんてものは持ち合わせていなくて、この空気を壊したくなくて、そっと寄り添うだけで精一杯だ。家に着くまでの間は何も話さなかった。ただ千歳君の下駄のカランコロンという鈴重な音を聞いていた。

家の前まで来ると「今日は楽しかった、ありがとう」と私の頭を撫で顔を近づけてきた。私は思わず千歳君の胸を手でおさえ下を向く。

「どぎゃんしたと?」

嫌な思いをさせてしまったと慌てて顔を上げたが、きょとんとした顔で首を傾げていた。

「あの、なんか、こういうのって、どうなんやろ、って思って」

「こういうのって?」

「その、付き合ってないのに、キス、とか……」

言っていて恥ずかしくなり段々と声が小さくなる。そもそも手を繋いでいるし、キスだって強引とはいえしたのに、今の関係がふわふわとしていてよくわからない。それに対して千歳君は目を丸々と見開いて私に聞いた。

「俺ら付き合ってるんやなかと?」

私は彼以上に驚いた顔をしているに違いない。

「ごめん、ちゃんと言葉にしらんかったけんね」

こほんと一つ咳払いをして手を差し出す。

「みょうじさん好いとる、付き合うてくれませんか?」

「私も、千歳君が好きです」



これからよろしくお願いします、とゆっくり手を重ねた。


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