手紙を入れてきた人がなにをしたいのかわからないし、誰かもわからない以上はユウジと距離を置いた方が良いかもしれない。そう思っていた。
「なんでおるん」
「は?」
隣を歩くユウジになんでだと聞くと不愉快そうにされた。いや聞き方が悪かった。私でもは?って言うと思う。
「小春ちゃんとたこ焼き行く言うてたやん」
「俺かて行きたいけど衣装せな間に合わんのや」
「次のライブのやつ?」
「おん、小春にとびきり可愛いの着てもらいたいからな」
フリルと花たっぷりでピンクを基調に〜と楽しそうに話すユウジの言葉ももう入ってこない。今もどこかで見られているに違いない。何度も後ろを振り返るがこちらを見向きもせず急ぐように歩いている人ばかりだ。車が止まると連れて行かれるのではと距離を置くが信号が青になればすぐにいなくなる。角がある度に奥の方まで目を凝らすが怪しい人影はない。カーテンの空いている部屋も人は見えない。どこから。誰が。そのことで頭がいっぱいになってしまう。
「おい!」
後ろから腕を引っ張られ倒れそうになる。
「っ!!!」
なんとかバランスをとると思い切り振り払った。そこには目を見開いたユウジがいた。
「あれ?ユウジどないしたん」
「どないしたはお前じゃボケ!!!!」
車に突っ込みに行きよってからに自殺する気か、そう怒鳴るユウジに歩道を見ると赤信号になっていて車が途切れることなく横切っていく。そうだ、ユウジと帰ってたんだ。小さく呟いた私の手を握って歩き始めた。
「さっきからキョロキョロ落ち着きないねん」
「ごめん」
「俺ずっと一人で喋ってたんか、恥ずかしいやんけ」
「ごめん」
帰り道ずっと文句を言っていたが、ごめんとしか返せなかった。家の近くまでくるとようやく手を離した。
「なんかあったら電話してこい」
珍しく優しい言葉をくれた。頭を優しくなでられるなんて幼稚園以来かもしれない。少し泣きそうになったから足早に家の中へ入った。
手を洗いに洗面所へ向かう途中母に呼び止められる。
「これ、あんたちゃう?」
見せてきたのは昨日と同じ何も書かれていない封筒。
「それ、どこにあったん?」
「夕刊とるときにあったで」
「なんで私のって?」
「昨日封筒だけ玄関落ちてたんや、開いてたしあんたやろ」
そういえばポケットから出てきたのは中身だけだったなと思い出す。ありがとうと受け取ると、宛名くらい書くように言うときやと言われた。相手がどこの誰かもわからないのに?とは言い返せないまま部屋で開ける。今日はなんて書かれているのか、ふるえる手で取りだすと同じく赤い字で小さめに書かれていた。
浮 気 は ダ メ
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