試作四日目
「みょうじさん」
「あれ柳生久しぶりだね!」
呼ばれて振り向けば久しぶりに会う紳士君。
彼とは小説のオススメを教えあいっこして楽しむ仲だ。
「なになにオススメの本あるの?」
だから私はそれを期待した。
「本、と言えばお菓子の本読んでるらしいですね」
「あーうん。わかった。また幸村君か仁王かその辺りにそそのかされたんでしょ」
もうガッカリだまさか柳生まで。
せっかく今読んでる本が終わったからぬか喜びしてしまった。そんな私を申し訳なさそうに見ている。
「アデュー柳生よ!」
人の台詞をうばって去っていくことで許してやろう。
試作五日目
昼休み、またお弁当を持参して仁王が現れた。
「よう」
「また来たの?バレンタインなら何も話さないよ」
でも一緒に食べられるようにスペースをあける私は優しいと思う。
「まあそう言いなさんな」
そして当たり前のようにお弁当を広げるのが仁王らしい。
「なんなのよみんなまで巻き込んでさ、毎日誰かしら聞きにくるんですけど」
「お前さんが教えてくれたらすむんじゃなか?」
「なんで教えないといけないわけ」
「みんなが部活に集中できんからのう」
「それを教えてよ何でみんな知りたがるの?ていうか集中できないって何事よ」
「……実はみんなお前さんの事を好いてお」
「そんなわけないでしょ」
悲しいけれども私はキッパリ否定した。
みんな久しぶりに話したくらいだし、お互いにサバサバした付き合いしかしていない。
それにチョコ欲しいとか知りたいとか、それこそ今更何でって感じ。
本当に何でこんな事になっているのかわからない。
「そのうちわかるんじゃし言うてしまえばよかろう」
「そのうちわかるなら今教える必要ないでしょ」
「それもそうじゃの、ただそれまでにあいつらが我慢できるとは思えんがの」
仁王は最後に意味深な事を言って去っていった。
「あいつらって誰?我慢ってなに?」
私の呟いた言葉を拾ってくれる人は誰もいなかった。
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