神社の守り神様4

職員室の前までくると「じゃあな」とその場を去って行った。ありがとうと言う間もなかったので、何年何組か聞けば良かったと後悔をした。追いかけようか一瞬だけ悩んだが、また会えそうな気がしてやめた。大人しく職員室へ入り担任と少しだけ会話をする。もうすぐ朝の会が始まるから一緒に行こうと言われ、ぜひお願いしますと答えた。

教室の前までくると心臓がバクバクと煩くて、カバンを持つ手も力が入ってしまう。小さく深呼吸をしていると、それに気が付いた先生が「大丈夫、うちのクラスみんなみょうじが来るの楽しみにしてたからな」と笑った。入るぞ、という言葉におずおずとついていく。

「おはようみんな、今日はお待ちかねの転校生が来たぞー」

入ってすぐのセリフに、教室はわっと盛り上がった。美人でも可愛いわけでもスタイルが良いわけでもなんでもなくてごめんなさい、と心の中で謝り倒す。
そんな私に軽く自己紹介できるかと聞いてきたので、できるように見えるのか!?と驚いた。しかしできませんなんて言えるわけもなく、前々から考えていた台詞をそのまま口にした。

「みょうじなまえです。中途半端な時期に来ましたが、たくさん友達を作って都会の美味しいものを買い食いすることが憧れです!よろしくお願いします!」

一気に話すと大きな拍手をしてもらえた。クスクス笑う声や私も食べ歩き好きという声がチラホラ聞こえてきて、ホッと胸を撫でおろした。自己紹介がすんでしまえば少し心に余裕ができるもので、どんな人がいるのかなと教室を見渡す。

「あ、仁王……」

「知り合いか?」

小さな声だったにも関わらず先生の耳には届いたらしい。そうですと言えば今朝みたいに嫌がるんだろうなと思ったから首を横に振った。

「さっき職員室まで案内してもらいました」

仁王の前の席にいた赤髪の人が手を振りながら大きな声を出した。

「俺!俺もいた!丸井っていうの、シクヨロ!」

「し、しくよろ」

丸井声でかすぎ〜というツッコミにお前らが小さいんだと笑って返していた。確かに赤い人もいたけど、あの時みんな私のこと睨んでたからこんなに可愛く笑う人だとは思わなかった。とりあえずへらっと笑って返すと先生がちょうど良かったなと言った。

「え?なにがですか?」

「みょうじの席、仁王の隣だ」

「あ、そう、ですか……」

仁王の眉間に皺が寄っているのが気になるが仕方がない。私が仕組んだわけではないのに罪悪感を抱きながら席につく。

「あの、よろしくね」

なるべく小さく声をかけると小さく折りたたまれた紙を投げられた。慌ててキャッチし、開くと『約束は守れ』とだけ書かれている。必死にコクコクと首をふったら先生に注意された。

休み時間になると仁王はすぐにどこかへ行ってしまった。丸井はそれを狙ったかのようにすぐに仁王の席に座り声をかけてきた。

「なあ、さっき仁王になに言われたんだ?」

「なにも言われてないよ?」

よろしくの言葉にも返事がなかったのにと考え、案内してくれた時のことを聞かれたのかなと思い直したが、その時もたいして会話をしていない。

「ほら、なんか紙渡されてたろい」

「ああ、あれは、寝るなよって書かれてただけだよ」

咄嗟にでた嘘だったが当たり障りないように答えれたと思う。実際丸井はなんだそんなこと転入生に言うなよなーわざわざ紙に書きやがってと笑っていた。

「あの、今朝はなんかお話してたところお邪魔してごめんね」

「ああ、いいよ。今日から新学期じゃん、一年生も入ってきたし」

「そうだね」

私もキリの良いところで入ろうと決めていたので一年生の入る入学時期、他の学年からしたら新学期の始まる今日にした。だから一年生より数日遅めにこの学校へ入った。それを知らないのか気を使ってくれたのか丸井は今この学校がどんな時期かを説明してくれた。

「俺らテニス部なんだけど、それでちょっとな」

「そうだったんだ」

言葉を濁されたので、やっぱり迷惑かけたのではと不安になった。でもすぐに笑顔で話しを切り替えてきたから、気を使ってくれたのだろうと私もその流れに乗ることにした。

「自分で言うのもなんだけど、強いんだぜい」

「仁王も?テニスするの?」

「俺もあいつもレギュラーだ、今日の放課後見に来いよ」

行きたい、と答えようとした時ちょうど仁王が戻ってきた。どきんしゃいという声に丸井は慌てて自分の席へ戻った。仁王は何話してたんだという目で見てきたので横に首を動かしといた。無言のやり取りに丸井は不思議そうにしていたが気づかないフリをして前を向いた。




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