放課後になったのでテニスはどこでやるのか聞こうと丸井に声をかける。しかし待ってるからなとだけ言って仁王と一緒にさっさと出て行ってしまった。待っていると言われても、どこへ行けば良いのかサッパリわからない。なんだったら自分の靴が入っている下駄箱へたどりつけるかも微妙だ。どうしたものか、とりあえず帰る用意をしていたら前に座っている友田さんが振り返ってこう言った。
「ね、テニス部見に行くの?」
「そう思ったけど、どうしようかな」
二度目の休み時間に誰か声かけようと思ったが、ある程度グループができていた。勉強するフリでもしようかと思っていたところ声をかけてくれたのが、今振り返って話している友田さんだった。どんな食べ物が好きなの、から前住んでいた場所など話を聞いてくれたり今どこまで勉強がすすんでいるかなどザッとではあったけど休み時間の度に話してくれた。
「なんか用事があるの?」
「ううん、なんというか場所がわからないというか……」
優しいからきっと私が教えてと言わなくても案内してくれそうな友田さん。それは悪いのでそうならないような言い方を考えたものの遠回しな説明ができなかった。
「そりゃそうだ!一緒に行こうよ」
ね、と誘ってくれているのに断るなんてできず、お願いすることにした。ごめんねと謝ったら、私も行きたかったから良いのと楽しそうに色々なことを話してくれた。下駄箱への道のりもこれを目印にすると良い、この教室はサボリに使える、あの先生は厳しくて、この先生は抜き打ちテストが多くて、そんなことを教えてくれた。それからこの学校ではテニス部の、特にレギュラーと呼ばれる人達の人気のすごさも教えてくれた。部長が誰で得意技はこういうので、そんな説明を全員分してくれた。すごく詳しいことと嬉しそうに話すこと、人気があることから気になったことを聞いてみたら、嫌がるわけでもなく答えてくれた。
「友田さんはその中の誰かが好きなの?」
「そうなのー!また後で説明するね!」
ここで名前を言ってもわからないでしょ?と言われ確かにそうだと思ったので、友田さんのタイミングで聞くことにした。
「ね、私のことちよって呼んで良いからなまえって呼んでもいい?」
「んへ!?い、いいよ……」
「嫌なら無理しないで」
面と向かって確認されたのがなんだか照れ臭かった。そのせいで変な反応になってしまったせいで嫌だと思われたのだろう。
「違うの、ちょっと恥ずかしくて、本当に良いよ」
「なんだそれ可愛いな〜!」
私の腕をするりとからめてくるちよに、汗臭かったらごめんと謝るとおもしろすぎって笑ってくれた。
コートにつくまでの間、ちよが教えてくれた仁王の話を何度も思い出していた。コート上のペテン師、変装が得意でどんな人にもなりきる。そう言っていた。じゃあ守り神というのは私を騙しているのか、本当のことなのか。わからないけど、ただ、もっと仁王のことを知りたいなって思った。
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