神社の守り神様8

翌日、自分の席に座ると『待ってました!』と言わんばかりに丸井が声をかけてきた。昨日はちゃんと見れたのか、どうだったかということだった。

「見てたよ、いっぱい動いてすごかったね」

「俺ら幼稚園児かよ……」

そんなつもりじゃなくて、ルールを知らないものだから他にどう言えば良いかわからなかっただけだ。そのやりとりに肩を震わせた人がいた。

「仁王?お前笑ってんの?」

「お似合いぜよ、幼稚園」

「いや、俺だけ!?」

よほどツボにはいったのかしばらく静かに笑っていた。そんな仁王から目が離せないでいるとちよが声をかけてきた。

「おっはよ」

「おはよう、昨日はありがとう」

「こちらこそ!」

「それよりあまり見つめてると溶けて消えちゃうかもよ」と耳打ちされた。ドキッとして仁王を見ると目が合った。聞こえてはないと思うけど、キツネの聴力って良かったかな、今は人間だから関係ないのかな、なんて考えてしまった。しかし仁王は気にする様子もなく丸井と話しをはじめる。

「来週だもんなーどうすっかなー」

「ツケがまわったな」

ちよはなんのことかわかったらしく会話に混ざった。

「期待してる子多いって聞くよー」

「まじかよ、プレッシャーかけんなって」

なんのことか聞いてみると、毎年新入生歓迎会というものがあってテニス部も出し物をしているらしい。一年生の時は当時の三年生がコントをやったそうだ。二年生の時は幸村君、真田君、柳君、柳生君で演劇を披露した。そして今年はジャッカル君切原君、仁王と丸井で何かしないといけない。それが来週なのに何も決まっていないと悩んでいるが、毎年恒例のことなので楽しみにしている人が多いんだということらしい。

へ〜そういうのがあるんだね、と話しを聞いていたら仁王が声をかけてきた。

「あの時もちょうどその話をしとったんじゃ」

「あ、職員室聞いた時?」

「そ、なんか良い案あるか?」

「なんだろう……マジック、とか?」

今朝ニュースを見ていた時、サーカスのCMが流れたのを思い出した。サーカスはさすがに無理あるが、マジックならそれっぽいことができるのではと思った。

「大がかりにならない?」

「うん、忘れて」

ちよの現実的なツッコミに、道具用意したり練習したりしないといけないこと、そもそもマジックのタネを知らないということに気が付いた。しかし仁王と丸井は目をパチクリさせた後、ニヤリと笑った。

「なんでそれ思いつかなかったんだろ」

「決定じゃな、道具は演劇部に借りるぜよ」

「それなら任せとけ、ジャッカルに」

トントンと話しが進んでいく様子を見ていると、ちよが納得したようになるほどと言った。どういうことか聞くと、仁王はイリュージョンで相手を錯覚させるというプレイをすることがあるという。それでマジックもできるんじゃないかというのがちよの考察だった。仁王にそうなのかと聞いたらプリッと返ってきた。
神様用語なのだろうか、どういう意味なのか聞きたかったが先生が入ってきたので聞けなかった。でも授業始まる間際に仁王が「ありがとな」って言ってくれたから、さっきのはyesという意味だったんだろうと受け取ることにした。



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