神社の守り神様9

あれから仁王と丸井は休み時間になるとすぐどこかへ行くようになった。
自動販売機の前で会ったので聞いてみたところ、本番が迫っているので少しでも時間があれば練習をしていると言う。そこに居合わせた幸村君が、テニスもそのくらい必死になってほしいと口にしていた。そう言われることを察したんだろう二人は、幸村君が言い終わる前には姿を消していた。

どんなショーが見れるのか、楽しみにしていた日がついにやってきた。午前中の授業を全部削って、歓迎会という名の出し物をするというのがまた嬉しい。広い体育館で決められた席に座る。隣がちよだったので始まるまで会話を楽しんだ。

「毎年この歓迎会を楽しみにしてる人が多いんだよ」

「全部活がするの?」

「ううん、やらないところも多いよ」

シャイな人が多い部活もあるしやらないとこはチラシ配ってもらえるんだよ、それも結構おもしろい物が多いんだ。そう言ってちよは去年の新聞部はどうで園芸部はこうで、と教えてくれた。漫画や小説風に書いてるところもあると聞いて、はやく読みたいなと思った。

「今年はテニス部がトリだね、一番人気だもんなあ」

「あれだけファンいるもんね」

「顔良くてスポーツできるって、そりゃモテるよね」

「柳生君は頭も良いし?」

ちよは慌てて私の口を塞いで、「そういう危ない発言禁止!」と怒られてしまった。
そんなやりとりをしていると、すぐに歓迎会が始まった。最初はバスケ部で、バスケ漫画の有名な話を再現するというもの。見入って泣きそうになったのは内緒だ。その後も次々とテンポ良く進んでいき、いよいよテニス部の番になった。

今までも披露前は歓声があがっていたが、桁違いだ。鼓膜が破れるかと思うくらいの盛り上がりに怖くなり、ちよの腕にしがみついた。腕が揺れていたので笑っていたんだろうけど、その笑い声すら聞こえなかった。

照明が落とされ幕が開き音楽が鳴るとようやく歓声は落ち着いたので、腕も開放しといた。
パッと四人に照明があたるとまたキャーという声が聞こえたがすぐにおさまる。
はじめはよくテレビでも見るような、剣を刺しても突き抜けないとか早着替えなどのマジックだった。知っているものが目の前で繰り広げられるとテレビとは違う緊張感や迫力に圧倒され、一つ一つ大きな拍手が飛び交う。体育館だというのに不思議な世界にいるかのような気分になる。最後は瞬間移動だった。どれもこれも考える隙を与えずに進み、始終驚きっぱなしだ。それはみんなも同じで終わってからもしばらく余韻は消えなかった。

教室へ戻ると仁王と丸井はあっという間に囲まれてしまう。どうやったのすごいなど各々の感想を直接聞けて二人も嬉しそうだった。そんな二人を眺めていたら二人と目が合ったのでお疲れ様と声をかけた。


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