母と一緒にお供えをするいなり寿司とステーキの準備をするため早起きをした。珍しく父も起きていて、めずらしいねって声をかけたら見事にハモった。それに対して母は二人とも毎日早起きだと良いのに、と言ったので聞こえないフリをした。
油揚げは母が煮詰めてくれたので、私は五目御飯をつめていく。ご飯が見えるようにお皿に置き錦糸卵で飾り付け。それができあがると常温に戻しておいたお肉を一口サイズに切って焼いた。たったこれだけのことなのに少し疲れた。
母とお供えようにパックへ盛り付け、父はみんなの和服を選んできた。しっかり正装をするともうお昼前。慌ててみんなで神社へ向かうとお昼時だからかあまり人はいなかった。
清め水を通り鈴を鳴らし挨拶をする。前に来た時はなかったお供えするスペースが設けられていたのでそこに私達も並べ、どんな物があるのかとチラリと見まわすと声をかけられた。
「こうやってみんなが神様のことを忘れないでいてくれるから、神様は生きていけるんです。みんなが来てくれることが元気の源なんです」
優しい声で話かけた人は、やはり見た目も優しそうなおじいさんだった。その手には日本酒が握られていた。
「そうなんですね、ここはちょっとわかりにくい場所だけどたくさんの人が訪れているので素敵な土地だと思います」
あわてて返事をしたものの自分で何を言っているのかわからなくなった。それでもおじいさんは、はい素敵な所ですとほほ笑んでいた。仁王が五月が好きで元気な理由はこれかもしれない。そう思うと私もなんだか嬉しくなった。
「なまえ、そろそろ帰るわよ」
母の呼びかけにペコリとおじぎをし、両親と神社を後にする。
「お母さん出る時に一礼するの忘れちゃった」
「お父さんもだ、偉かったな」
「あ、本当だ私も」
「してたじゃない」
「あれはおじいさんにさようならってしただけだよ」
「おじいさんなんていたか?」
「もう私達だけだったよね」
家に帰りご飯を食べながらでた話題はさっきのことだった。あんな狭い場所で見落とすわけがないのに。もしかして、あのおじいさんも使いの一人なのだろうか。入口に置かれている狐は対になっていたので気にはなっていた。仁王に聞いてみたい気持ちと謎のままにしておきたい気持ちで揺れたから、気分を紛らわすためにクッキーを焼いた。
back もくじ next