そろそろお開きにしよう、と外へ出る。私はすぐに柳君へ駆け寄った。
「柳君、今日は予約してくれてありがとう」
「お礼は俺の質問に答えるだけで良いぞ」
怖くて固まる私を見て柳君は意地悪に笑った。
幸村君が電車こっち方面の人は俺のとこ、どこ方面は誰のとこに集合と声をかける。私は仁王と二人だ。すごく楽しみにしていたし嬉しいはずなのに、今は二人だけになるのが嫌で自然と距離ができる。じゃあ解散、そう言ったのに幸村君は真っすぐ私達の所へやって来て、仁王になにか耳打ちし私にまたねと声をかけいなくなった。
「俺らも行くか」
「うん」
声をかけてくれても嫌な緊張がとれず、いつかの日のように後ろをついて歩く。いつもより長く感じる電車を降り、歩いていると歌や太鼓の音が聞こえてきた。仁王が振り返ってちょいちょいと手招きをしたので隣に並ぶ。
「ちょうど今の時間が一番盛り上がるんじゃ」
「そうなんだ」
「神社の中は狭いから休憩場所なっとる」
「え、そんなことしていいの?神様寛大だね」
「自分の為の祭りじゃしな、まあ階段下の通りは屋台でいっぱいぜよ」
「そうだよね、まだ神社まで距離あるのにもう屋台見えてるもん!」
仁王ともいつものように会話ができたのもそうだが、思っていたよりも大きそうな祭りに自然とワクワクしてくる。
「にお、はやく、はやく行こう!」
「慌てんでも祭りは逃げん」
じれったくて手を引っ張ると意外にもすんなりついてきた。母からもらったお小遣いでヨーヨー釣りに挑戦する。
「しょっぱなから大丈夫なん」
一番初めに目にはいるところにあった屋台に飛びついたので、もっと周ってからじゃなくて良いのかという意味だと思う。でも私はやると言って子供の後ろに並んだ。結果は取れなかったけどお店のおじさんがオマケで一つくれた。ポチャポチャ音をたてながら歩いているとお面を見つけた。
「あ、お面」
「買うんか?」
「欲しい、仁王もかぶろうよ」
お店のおじさんにどれにするかと聞かれて仁王はアレと指をさした。それは子供向けアニメにでてくるうさぎのお面だ。仁王は顔をだすように横にかぶった。
「彼女さんは?」
「え!?あ、あれが良いです!」
彼女じゃないのに答えてしまったことに動揺してしまう。はいよ、と渡されたお面をそのまま被った。恥ずかしくて顔を隠すのにちょうど良い。
「きつねって……」
「仁王こそお花のついたうさぎさん」
「かわええじゃろ」
そのまま歩いて最後の屋台までくるとりんご飴が売っていた。キラキラと光る飴はとても綺麗だ。
「食べたいんか?」
「でも結構お腹いっぱい」
そう言うと仁王はスッと屋台に行き買って戻ってきた。
「イチゴなら小さいから食べれるじゃろ」
一本の串に二個ささっているイチゴ。全部食べられるだろうか、そう思いながら受け取った飴を口に入れる。カリッとした触感の後にじゅわっと広がるイチゴ。
「どう?」
「甘酸っぱくて美味しい」
「ふうん」
仁王は私が手に持ったまま残りの一個を口にした。
「変な感じ」
「苦手?」
「嫌いじゃない」
唇についた砂糖を舐めとる姿を思わずジッと見てしまった。それに気づいた仁王が半分個も悪くないなって笑った。その途端心臓がうるさいくらいバクバクと鳴りだして死ぬんじゃないかってくらい苦しく締め付けられた。いきなりのことに驚いて思わず仁王の手を握る。そのまま優しく握り返してくれたから、少し泣きそうになった。
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