しばらくゆっくりしていたが「明日にそなえてもう帰ろう」と柳君が言った。すると慣れたように同じ方向へ帰る人同士集まりゆるゆると別れた。電車を降り、まだ明るい帰り道を並んでゆっくり歩いていると仁王が口を開いた。
「あの二人うまくいって良かったな」
「え、知ってたんだ」
あの二人、ただそれだけで誰のことを言っているのかすぐにわかった。ちよは誰にも言うつもりはないから内緒だと言っていた。とは言え私は聞いたし柳生君は仁王だけには話していたのかもしれない。でもそうじゃないことは仁王の言葉ですぐにわかった。
「俺には見えるから」
「見えるって?」
「感情というか想いって言うた方がええかも、そういうのがわかるんじゃ」
「あそこの神社って恋愛成就なの?」
「いや、豊作とかかな」
「あー!だから仁王と一緒だとお米おいしくできるんだ!」
それは丸井から聞いたのかと聞かれ、そうだと答えた。すると、あいつは食い意地はってるからやりがいがあると仁王は笑う。だから丸井はあんなに張り切っていたのかと納得した。
それにしても想いを見えるということは私の気持ちもバレバレかもしれない。それはなんかずるいと思い仁王はどうなのかと話をふってみる。
「どうって?」
「好きな人、いないのかなって」
「おるわけがない、俺は人間じゃなか」
「こうやって人と生活してるのに?」
「それでも俺は恋なんてしない、守り神には必要ない」
「守り神様でも好きになるのは悪いことじゃないよね」
「だからって好きになるだけ無駄じゃ、お前さんたちと俺は違う」
「そんな言い方しなくたって良いと思う」
「なんも知らんのに適当なこと言うからじゃ!」
いつものふんわりとした雰囲気は全然なくて肌に刺さるピリピリとした空気に足がすくむ。誰も好きになることなんてない、なんて悲しいことを言ってほしくない。確かに私には神様の事情なんて知らない。わかるわけがない。だからこそ口を出すなと仁王が言っているのは理解きる。でも私は謝らなかった。怒っている仁王の目が寂しそうに見えたから謝ろうとして口を閉じた。仁王も本当は誰かを好きになりたいんじゃないかと思ったから、これ以上何も言わずに走って帰った。
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