神社の守り神様31

朝の会がはじまる時、先生がやたらと嬉しそうにしているのでなんだろうと思っていた。みんなもなんだと思っていたようで、口々に何があったのと質問していた。先生は微妙な間をためて言った。

「いよいよ、お米が届きました!」

わあっという声があがる。そんな私も小さな声で「おお……」と反応してしまった。全部自分でやったわけではないが、何かを育てことがない私にとって『自分で植えて様子を見に行っていたあの苗だったものが、ついにお米としてやってくる』なんて少し感慨深い。
しかも先生は更に続けた。

「一時間目の授業は三十分だけ削ります、今から家庭科室に移動!」

その言葉の意味がすぐにわかり、みんな足早に教室を出て行く。家庭科室につくと手を洗ってから班ごとに座らされた。仁王と向かい合わせなのが気まずい。

先生が一人一個の小さな塩むすびを配りながら大きな声で説明する。みんなの分は後でお米のまま配るけどとりあえずとれたてを食べるぞ。でもその言葉は誰も聞いていないようで、「日直はやく号令かけてー」という声であふれかえっていた。先生は苦笑しながらも日直にいいぞと呼びかけた。

「いただきます」

その言葉に「いただきます」と復唱してからおむすびを口に運ぶ。

「んー!?美味しい!」

噛めば噛むほど甘みを感じることができる。我が家で買っているお米と種類は同じなのに、なんでこんなにも違うのか不思議でならない。もう一口食べてみるがやっぱりいつものとは違う。

「本当に美味しい!すごいね仁王」

艶やかに光るおむすびから仁王へ視線をずらすと、目を真ん丸にしてこちらを見ていた。ほっぺがぷっくり膨らんでいるが、口を動かすのも忘れているみたいだ。そんな様子を見てハッとする。そうだ、言い合いになったまま仲直りもしていなかったんだ。
前に仁王の神社は豊作のご利益があると聞いていたので、つい声をかけてしまった。ゆっくりちよと丸井に助けを訴えてみるが、二人はしばらく固まったあとゆっくりまた食べだした。もう一度仁王を見るといつのまに食べ終えたのか指についたご飯粒もペロリと舐めとるとこだった。私もさっさと食べようとしたところで声をかけられた。

「全然違うじゃろ」

「う、うん!ふっくらなのにモチモチですごく甘い!」

そう答えると仁王は満足そうに口角を上げた。そんな私達のやり取りを見て安心したのかちよと丸井も会話に混ざった。

「だろい!?俺毎年この日が楽しみでよ〜」

「私もー!初めてやった時は正直めんどくさいって思ったけど衝撃の美味しさだよね!」

ここでは中等部だけ毎年参加するらしく、高等部に上がったらしないんだとちよが言った。丸井がすごく残念そうにしていたが、私は今回きりでもこの感動を味わえて良かったなと思った。

教室に戻る途中、小声で仁王に話かけてみた。

「仁王、こんなに美味しく育ててくれてありがとう」

「お礼はあそこの土地神さんに言うんじゃな」

「もしかしてあの時挨拶してた……?」

「ようわかったな、顔見知りなもんでちょいとヒイキにしてもらってるんじゃ」

「じゃあやっぱり仁王にもありがとうだね」

仁王がそうやって気をまわしてくれたからうまく作れているんだと思う。農家の人も言っていた『ここ三年間はとくに良い出来だ』、それを伝えると仁王は照れたように頬をかいた。



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