久しぶりに会話ができたことが嬉しくて、お昼ご飯を終えてから屋上に上がる仁王を追いかけた。
「サボリか?」
「ううん、戻るよ」
仁王はサボるつもりで来たのか、私は残りの休憩時間をここで過ごすだけだと思っていたのに。とりあえずフェンスに寄り掛かるように腰を下ろす。仁王はポケットからシャボン玉を取り出しゆっくり吹いた。飛んでは消える、幻想的だなあと目で追っていたがふと思い出した。
「あのね、私ここに来る前にも地主神様の所に通ってたの」
「熱心じゃな」
「遊具もあったからね。そこは兎が神使だったんだよ」
「へえ」
まるで興味ないという返事だが、聞きたくないとは言われないのを良いことに話を続けた。昔に見た夢をまた見たこと、それはオオカミとウサギとキツネとおじいさんがいたこと。
「そのおじいさんってこの前あそこの神社で会ったおじいさんそっくりなの」
「……夢、なんじゃろ?」
「そうなんだけど、そんなことってあるかな」
「夢はなんでもありじゃ」
納得のいかない私をよそに、そういえばと別の話を切り出してきた。
「お前さんが置いてったザクザクしたチョコなんやが」
「ああ、グラノーラチョコのこと?」
「姉貴がえらい気にいっておった」
「え、仁王ってお姉さんいるの!?」
驚いていると鳥居の近くに狐二体あって、そのうちの片方が姉だと教えてくれた。そうか、お姉さまだったのか……。てっきりあのおじいさんがそうなのではと思っていたのに衝撃的事実だ。
「また持って行くね」
「喜ぶじゃろな、伝えておく」
あの場を後にする時に聞こえた音は、お姉さんがさっそくチョコの封を開ける音だったことがこの会話でわかる。実はあの時もし仁王じゃなかったらという恐怖が少なからずあったので、今わかってスッキリした。
また吹き始めたシャボン玉を見ていると、段々と眠くなってくる。自然と目を閉じていたようでチャイムの音に驚く。慌てて立ち上がるが仁王は動こうとしない。
「行かないの?」
「俺がおらんとさみしいんか?」
からかうように聞いてくるその表情は少し意地悪で、でも楽しそうだ。ここで寂しくないって言ったら思い通りの反応になるんだろう。そうわかっていても私は素直に返した。
「うん、隣にいてほしい」
「……しゃあないの」
仁王は目をパチクリさせた後、めんどくさそうに歩き出した。
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