神社の守り神様33

「なまえに重大なお知らせがあります」

ちよにそう言われ、連れて来られたのは空き教室だった。テニスコートの見える窓際に二人で並ぶ。仁王の銀髪がよく目立つので、すぐに見つけた。しばらく仁王の動きを目で追っていたが、中々話そうとしないちよを待ちきれなくなった。

「ねえ、なにかあったの?」

移動までするということは、よほど人に聞かれたくない話なんだろうということはわかるが、内容はまったく想像つかない。

「仁王がね、また告白されたらしいよ」

「告白……そりゃあれだけ人気もあれば珍しくもないよね」

「まあね、しょっちゅう呼び出されてるもん」

「そう、だよね」

「意外にも律儀に出向いてちゃんと断ってるみたいだけどさ」

「へえ」

あれだけ女子と会話をしようとしない仁王なのに、そういうところはちゃんとしているみたいだ。やはり神使なだけあって礼儀はきちんとしているのかもしれない。

「へえって、いつかとられちゃうよ」

「そんな物みたいに言わなくても」

「仁王が女の子と話してるのって初めて見たんだよ」

「それ前も誰かに言われたな」

「私は二人が恋人になったら良いなって……」

そこまで話すとちよは顔を歪めて呻った後、両手をパンッと合わせると勢いよく頭を下げた。

「ごめん、こういうのは人が口出しするようなことじゃないのに」

「ううん、私のこと大事に思ってくれてるの伝わったよ」

「そうなの!なまえのことが好きだから〜もう私と付き合おう〜」

ぎゅうっと腰に手をまわしてきたので、くすぐったくて声をたてて笑った。

「柳生君がいるでしょ」

「そうなんだけどさ〜」

「それよりさ、もっと近くで見ないの?もう終わっちゃうんじゃない?」

そう言うとちよは少し迷っていたが、「見る」と一言だけ返し出て行った。私はもう一度仁王を見た。ちよの前では平然を装ったものの、いつか誰かと付き合う時が来るのかと思うと、胸が締め付けられた。ギュッと握りつぶされているように苦しい。仁王は人と恋愛することはないと言っていたけど、好きな人ができたら考えだって変わるだろう。でも、もし告白をして断られたら、今までみたいに話すこともできなくなったら……そう思うと伝える勇気はでない。



back もくじnext