神社の守り神様37

いつものように黙々と歩いていると、あっという間に神社の前まで来てしまった。思わず立ち止まる。数歩先に進んでいた仁王が振り返ってどうしたと聞いた。

「仁王に話したいことがあるんだけど」

「なんじゃ」

緊張しすぎて声が震える。いつもは乾燥気味の手のひらも汗ばんでしまい、ブレザーの裾を強く掴んだ。普通じゃない様子を感じ取った仁王は、私の前まで戻って来て向き合う。

「私、仁王が好き」

言葉にして伝えてしまうと少し緊張がとけたと同時に、長距離を全速力で走ったような疲れがドッと出る。仁王は告白されると気づいていたのか驚いた様子はない。でも、怖い面持ちでジッと私をにらみつけている。

「こうならんように女子とも話さんようにしてたが、お前さんに声かけたのは俺のミスじゃ。悪かった」

「謝らないでよ……私は嬉しかったのに」

「俺は人間じゃない、それを理解してると思っとった」

「してるよ。人間じゃなくても守り神でも私は仁王が好き!仁王だから好きなの、人間かどうかなんて関係ないよ」

さっきまで震えていたのが嘘のようにスラスラと自分の気持ちが口にできる。それはたぶん、仁王が私の気持ちわかってくれていないんじゃないかって感じたから。でも仁王は苦い顔をするだけで、そんな顔をさせたかったわけじゃないのにと心のどこかで後悔し始めた。

「なんなんじゃお前さんは……!あの時だって、そんなんじゃからああいうことに!」

「ごめん、どういうこと?」

言い方からして私がなにかしでかしたようだけど思い当たることがない。忘れているのか無意識だったことなら教えてほしい。そう思い問うと悩むそぶりを見せポツポツと答えた。

「俺、ほんまは神使じゃなかったんよ」

「え……?」

「あの日、ほんまの神使が仕事をサボったんじゃ」

いつの話をしているのか、これは私のことにつながるのかわからない、さっきの質問の答えになっていない、と思った。けど、辛そうに話す仁王を止めることなんてできるわけがなくて、静かに聞くことにした。

「たまたま通りかかった俺に神さんがお使いを頼んできてな、礼にステーキやるって言われてお腹すいとったから軽い気持ちで引き受けたんじゃ」

「うん」

「一応よそもんやき、そこの使いに化けたんよ」

小さな狐が神の使いをやるなんて、当時では考えられない出来事に一瞬で話が広まった。当然サボっていた神使にも話が届いて、わざわざ使い先の神社で待ち伏せていた。兎に化けても匂いは狐、そんなまやかし狼には通用しなかった。

ここまで話を聞いてだんだんと理解する。

「それじゃあ、あの時の夢じゃなかったんだ」

「普通神使なんて見えんのにな……そういう純粋さが俺にはしんどい」

そう口にした仁王は本当に今にもつぶれそうだった。私が苦しめているんだ、当時のことも今までも迷惑だったんだろう。そのことに気が付かずに仲良くなったと思っていた自分のことしか考えられない情けなさに涙が出た。



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