明るい光を感じ目を開けると、見慣れた天井が見えた。今の状況を理解できないまま体を起こす。そこは自分のベッドの上で、私はお気にいりのパジャマを着ていた。
あれからどうやって帰ったのかわからない。それどころか、仁王が名前を言おうとしたところから記憶が曖昧だ。あの時、本当に名前を告げたのか。それとも聞く前に私の意識が飛んだのか……。一生懸命思い出そうと頭を動かしていると「遅刻するわよ」という声が聞こえた。部屋を出て起こしに来た母とぶつかりそうになる。
「珍しい、起きてたの」
「ねえ、私、昨日いつ帰ってきた?」
「さあ?私が仕事で帰ってきた時はすでに寝てたし」
それよりはやくご飯食べちゃいなさい、そう言い残し階段を下りて行った。父は母よりも遅く帰ってくる、ということは誰もわらかないということだ。記憶にない時点で失礼ではあるが、どうなったかわからないままなのはもっと失礼だろう。そう思い学校で仁王に聞こうと、いつもより早めに家を出た。
神社の前を通る時、何故かとても悲しくなって勝手に涙がこぼれた。言いようのない不安が遅い座り込みそうになるが、なんとか足を前に進める。
学校につくと、ちよが既に教室にいたが丸井と仁王の姿はまだない。
「おはよう」
「おはよ!昨日は一緒に帰れなくてごめんね」
「え、なんかあったっけ?」
「ほらクレープ屋に行こうって言ってたじゃん」
「そうだね、でもいつでも良いよ」
私は昨日の時点で自分が思っている以上に記憶をなくしたのか、クレープ屋の話も覚えていなかった。でも私もちよも甘い物は好きだからいつかそんな話をしていたかもしれない。そのまま話を合わせたがおかしいのは私の記憶だけじゃなかった。
「おーっす」
そう言って声をかけてきたのは丸井だった。でもその隣にはいつも一緒に来る仁王がいない。SHRが始まるまでまだ時間はあるが、はやく昨日のことを確認したくてどうしたのかと聞いた。
「おはよ、仁王は一緒じゃないの?」
「仁王?誰だそいつ」
「え……もしかして喧嘩中?」
「いや、だから誰だって」
「誰って仁王じゃん、私の隣で丸井の前の席の」
「元々そこは空席だろい」
「ちょっと、いくら喧嘩しててもそんな風に言うの良くないよ」
「友田、みょうじどうしたの?」
丸井はお手上げだと言わんばかりにため息をついてちよに話を振った。そうだ、ちよに説得してもらおう。そう思ったのに、怪訝な顔をして私のおでこに触れた。熱はなさそうだけど、丸井に向けてそう言った。
「今朝は来るのはやかったし、なんか夢でも見た?」
「待ってよ、ちよも仁王がわからないって言うの?」
「え……うん、そんな名前聞いたことないよ」
二人の言葉に唖然とした。でもこの後出席の確認で仁王の名前は呼ばれなかったし、休憩時間にレギュラーのみんなにも聞いて周ったけど答えは同じ『知らない』だった。
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