君を守り隊15

一人怪しく見えるとみんな関わっているんじゃないかって思ってしまう。それもテニス部の誰かなんだとは思う。ユウジと千歳と白石、今までみたいに話せなくなってしまった。
金ちゃんに「どないしたん元気ないで」と声をかけられても、それも望み通りでしょって返しそうになった。謙也に「たこ焼き飽きたならクレープでも行くか?」と誘われても、でもそれ毒入りなんでしょうって言ってやりたかった。みんな、みんな裏では笑ってるくせに。



月数回の朝練がある日、部室の前へ行くとしゃがみこんでいる謙也とフェンスに寄り掛かる千歳がいた。

「みょうじ、はよー」

「二人ともなんで入らないん?」

「今日鍵の担当俺やのに見つからんくて」

「今白石が取りに行ってくれとる」

それでさっきから鞄をごそごそ漁っているのか。部活で持っているのスペア、白石は職員室へ取りに行ったんだろう。謙也はないなーと言いながら、胸ポケットからズボンのポケットまでポンポンと叩くように確認している。「あ!」と大声を出したかと思えば、鍵あったわと見せてきた。

「ほな白石に電話するで」

「おおきに!」

ここから職員室へはそれなりの距離があるのではやいこと教えた方が良いだろう。本当はかけたくないが千歳はスマホを持ち歩いていないし、謙也は荷物を片付けている。仕方がなく登録されている番号にかけた。

「あれ?」

「なんや」

「繋がれへんわ」

「んー?あ、もしかして……」

謙也が私の携帯画面をのぞき込んできた。すると「あーやっぱり」となにか納得したようだった。

「先々週かな、白石番号変わったやん」

一斉送信でメールきてたやろ?と言われたが心当たりがない。メールをよく読む気力がなかったせいかもしれない。とりあえず転送してもらったが、やはり見覚えがない。白石がリストに載せ忘れたんだろう、そう思ったのに新しい番号を見て背筋が凍った。

一日に何度も見た番号だ、見間違えるはずがない。メールから番号をコピーして編集をする。数日前までかかってきた無言電話のせいで着信履歴は知らない番号で埋められていた。それが編集してすぐに履歴を表示すると白石でいっぱいになった。

まさか、白石だったとは。確かに帰り道ぶつかった時、頭の片隅でなんでこんなところにいるんだろうとは思った。でも近くにスポーツショップがあってよくそこに行くと言っていたから、あの日もそうなんだろうって深く疑いなんてしなかった。私がユウジを疑っていること、楽しんでいたのだろうか。

思わず携帯を地面へ投げつけた。

「え?」

「みょうじ?」

驚いてる謙也と千歳に何も言わずにその場を離れた。しばらく部活は休もう、ちよに相談しよう。はやく教室に行きたい、靴を脱ぎながら下駄箱へ近づくとちよの姿が見えた。

「ち、よ……?」

声をかけようとしてなにかおかしいことに気が付いた。ちよの下駄箱はもっと玄関に近い場所だ。あそこは私の上靴が入っている。なにをしているのだろう、静かに見ていたらなにかを入れたようだった。ちよがその場を離れすぐに確認しに行く。そこには以前部室のロッカーに入っていたのと同じお菓子があった。なんでこれがここに、なんでちよがこれを。まさか、ちよも白石と一緒になって?そんなわけがない。だって一番の仲良しなのに。ちよは、ちよにとって違うとしたら。もう、味方は誰もいない。



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