君を守り隊16

「なまえちゃん、顔色悪いからこれ貸してあげる」

「メイク道具……」

きれいな空気にあたりたくて中庭でボーッとしていると、小春ちゃんがメークポーチを持ってやって来た。最近顔色が良くなと気になっていたらしく、教室から私を見かけてわざわざ持って来てくれたと言う。気持ちはありがたかったが、自分の顔が疲れきっていようがどうでも良かった。化粧をする元気もない。それをそのまま伝えると少し苦い顔をされた。

「あんな、なまえちゃん……アタシ……」

「ごめん、今は一人にしてほしい」

なにか言いたそうにしていたが人の話をゆっくり聞いている余裕がなかった。いつも小春ちゃんとは女同士でしかできないような話をしたり恋話をしたり、テニス部の中では親密の仲なのに自分でも冷たいなって思うくらいの声で突き放してしまった。小春ちゃんはごめんなさい、と一言残して教室へ戻っていった。




ようやく長い一日が終わった。部活を休んだといえ長かった。やっと帰れる、その思いで急ぎ足で校門へと向かうがそこに白石がいた。なんで、部活は。立ち止まる私に気づいた白石がゆっくり近づいてくる。その度に下がるが白石の方がはやかった。

「みょうじ……」

手をつかまれそうになり後ろへ逃げようとしたその時、私と白石の間に距離ができた。

「そこまでばい」

割って入ったのは千歳だった。

「なんやねん」

「白石こそどぎゃんしたと?」

「最近みょうじの様子がおかしいから心配しとるんや」

言い合いが始まりそうな勢いに何も言えずに立ち尽くしていると、千歳がかばうように言ってくれた。

「みょうじが怯えとるん知っとる?」

「それは……」

なんで千歳が知っているんだろうという疑問はすぐに解けた。千歳のポケットから私の携帯が見える。きっと携帯を拾った時に画面を見てわかったんだろう。番号を知らなかったこと、登録してすぐに様子が変わったこと、携帯を投げつけその場から逃げたこと。これだけの条件が揃えば私だって察することができる。黙ってしまった白石に千歳が詰め寄ろうとしたところに、ユウジが走ってきた。

「お前らなまえに何しとんのじゃ!」

まるで二人にいじめられている私を助けに来たかのような発言。じゃあ千歳もユウジも私の味方なのだろうか。混乱している私に白石はポツポツと話し始めた。

「みょうじから、ユウジに後をつけられてるって相談されて」

「はあ!?」

「帰り道暗いしもしものことがあったらと思うと心配で、でも電話してもでーへんし、番号変わってから電話したら取ってくれるようなって、声が聞けると無事なんだってわかって安心してたんや」

なんやねんそれと怒鳴るユウジを千歳が抑える。よりによって本人がいる前でなんで話しちゃうんだよと白石を睨む。しかし白石はユウジとメンチ切りあっていてなんの効果もなかった。

「確かに毎日後ろついて帰ってたけどそれはなにかしてやろうって考えやなくて、変な奴おったらすぐ駆け付けれるようにじゃ!」

「ほな、やっぱり後つけてたん、ユウジなん……?」

「あ?おん」

「あ……あほおおおおお!!!!!!怖かった!ほんまに怖かった!!!!」

「大丈夫やって、俺やから」

「知らんかったし!わかるわけないし!」

今までないくらいの大声で怒鳴ると怯んだユウジ。どうして良いかわからなさそうにしている白石にも言ってやった。

「なにが心配や安心や!!!!ぶっちゃけめっちゃくちゃ気持ち悪かったからな!!!!」

「ご、ごめんなさい」

思い切り怯む白石に少しスッキリした私はまたユウジに詰め寄った。

「そもそもなんでつけだしたんよ」

「友田に誰かがなまえのことずっと見張ってるらしいから気を付けてあげてって言われたんや」

言われてみればちよに相談してからだから、時期的にもあっている。ちよとユウジが二人でこそこそ話していたというのはこの事か。はあ、とため息をつくがまだ問題は終わっていない。

「四六時中私を見てたのどっち?写真は?手紙は?」

そう問うと「「俺ちゃうで」」と口を揃えた。一人を除いて。

「あー……見とったんな、俺かもしれん」

ぽりぽりと照れ臭そうに頬をかく千歳になんでと聞いたら教えてくれた。

「実はみょうじが気になっとってつい目で追うてしもうとった。やけん、みんなん様子がおかしかばってん気が付いたんやけど」

「あ、もちろん好きって意味で」と恥ずかしそうに話してくれる千歳。でも全然ときめかなかった。

「いや、そんな、わかるよ。気持ちはわかる」

そう前置きをしてから続ける。

「好きな人のことは見ていたいし気になるけど、ほどがあるというかなんというか……やりすぎ」

せやな、と頷く二人に「あんたらもやで」と冷たい目で言ってやれば「はい」と大人しくなった。みんな私を心配してくれた故にこうなってしまったのはわかった。けど他のことは解決できていない。

「ほな手紙と写真は誰なんやろう」

「あと二分ばい」

「え?」

「シャッターおりるまで」

千歳の言葉に全員静かになった。どこから誰が撮るのだろう。私を含めみんな目だけを動かして辺りを警戒しはじめる。休み時間の一分ってあっという間に終わってしまうのに、こういう時の一分って三十分とかもっとあるように感じてしまう。すごく長い間立っているような感覚に襲われながらもジッとしていると、カシャっという音が鳴った。



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