朝起きてご飯を食べにリビングへ行くと、そこには知らない女がいた。おはようの言葉がすっ飛んで、ひえっという情けない声が出た。よく見たら昨日もいた子だった。
早く食べて学校へ行こう、そう思ったが自然と決まった自分の定位置に彼女が座っている。あいているのはすでに家を出た父の席だ。しかしそれが彼女の目の前というのもあって少し躊躇する。
「さっさとご飯食べちゃいなさい」
母の言葉に渋々席についた。目を合わさないようにしていても、俺の事をジッと見ているのがわかって食べにくい。掻き込むようにお腹へ流し込み、食器を片付けすぐさまその場を離れようとした。
「ごっそさん!行ってきます!」
隣のリビングにいる母へ声をかけるが返事はなかった。行きたくないと駄々をこねている弟達を着替えさせるので必死みたいだ。声はかけた、さあ行こうと靴を履きカバンを手にする。そして立ち上がってドアを開け……られない。後ろから引っ張られているせいで前に進めない。嫌な予感がし、恐る恐る後ろを振り返るとそこにはやはり無表情のみょうじがいた。
「なに?」
「…………」
「手、離してくんね?」
なるべく優しく声をかけるが、返事がないただの屍のようだ。すぐにハッとし、今のはなし!と頭を横にふった。とりあえず観察してみるがこちらをジッと睨みつけるように見ているだけで、まるで仲間になりたそうにこちらを見て……違う違う。
なんのアピールなんだよ!声に出してくれよ!
どうしたものかと考えていると、俺の裾を握っている逆の手をズイッと差し出してきた。握られていたのは鞄。それも立海指定の物。制服はセーラー服なのに?よくわからないがなんとなく答えは出た。
「学校連れて行けってこと?」
そう聞くと目をクリンとさせて頷いた。
「学校って立海で良いのか?」
今度は二度コクコクと頷いたので、わかったから手を離せと言うとようやく離れた。裾にはバッチリ皺ができたので伸ばしながら家から出る。
「俺部活があるから、とりあえず職員室までな」
ちゃんと先生のところまで送り届け、朝練に参加してから教室に戻るとみょうじの姿があった。まさか同じクラスになるなんて……。俺には心休まる場所がどこにもないのかと、小さくため息をついた。
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