我が家に宇宙人がやってきた6

その後夕食を食べながら、どういうことか聞くと母はキョトンとしていた。

「え?話さなかった?」

「聞いてない。しばらくうちにいることしか聞いてない」

「あらまあ……」

みょうじは母の友人の一人娘で、共働き夫婦の家庭らしい。父は単身赴任中で、母は出張という状況になってしまった。しかもその出張がいつ帰ってこられるかがわからない。中学生の女の子を一人家に残すには心配だが、通っている学校に寮はない。祖父母は田舎の方に住んでいるので通学が難しい。なので仕事を辞めるか一人暮らしをさせるか検討中だ、ということを電話で聞いたんだそう。そこで、立海なら単位調整のための少しの期間でも受け入れてくれるから我が家で預かります、と提案した。
三人も四人も変わらないわよ〜と言う母に対して、それは悪いからと断られたが預かりたいと駄々をこねたとか。何かする気なんてさらさらないが、それでも同い年の男がいる家に預けるなんて、と思ってしまうのは自分だけなのだろうか。

女の子ほしかったから〜と楽しそうに語る母。たぶん、本気で娘がいる気分を味わいたかったんだろう。しかし待望の期間限定娘は色々こじらせているっぽい。でもそんなことは気にならないらしく、次のお休みはショッピング行きましょうね〜と花を飛ばしている。

「……秋葉原に行きたいです」

「いいわよー!どこでもいいわよー!」

俺がどっか行きたいと言えば友達と行けばって言うだけなのに、なんという差だ。唖然としている俺を差し置いて二人はどんな一日にするかで盛り上がっている。

すっかり空気になってしまった自分は食事をさっさと終えた。アプリゲームをしながらお風呂の順番待ちをしていると仁王からマイントークがきた。開こうとして、そういえばと思いつく。今日みたいに母が間に挟むとめんどくさいなと思った俺はみょうじに声をかけた。

「なあ、連絡先交換しとこうぜ」

「え……」

珍しく返事をしてくれたものの拒絶を含んだ一文字だけだった。

「お前もその方が安心だろい」

「なんて打てば良いかわからないし、電話こわい……」

「業務連絡だけでいい、道わからないとか何時に帰るとかそんなん」

そう言うとまあ良いかと思ったのか、ゆるりとスマホを出してきた。お互いのコードを読み取り登録する。マイントークの新着友達には『なまえぽょ』と表示されていた。キャラ違いすぎるだろ。

「なんかあれば送っていいから」

それだけ言って仁王のトーク画面を開く。

『みょうじ絡み?』

ときていた。たぶん母からの電話のことだろうと思ったので、正解の文字が書かれた花丸スタンプを送りスマホを置く。その瞬間、ポヨンとトーク着信の音が鳴った。仁王のやつ早いな、そう思い開くと『お風呂先にいただきます』というメッセージ。おいおい、さっきは打てないとか言ってたのに、俺、目の前にいるのに、なんだこれは。

「……どうぞ」

あえて声に出して言うと少しだけ嬉しそうな顔をしたように見えた。ペコリと頭を下げお風呂場へパタパタと走って行く。もう一度トーク画面を見て「ま、いいか」という独り言がこぼれた。



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