家を出る前、行ってきますは言うように教えると、履いた靴を脱ぎリビングまで戻って声をかけてまた戻ってきた。ここから大声で言えば良いのに、コミュ障ってそんなこともできないのか。体育会系で揉まれてきた俺にはよくわからない。
「俺、あんま怒らねーし、家にいる時はマインじゃなくて直接声かけろよ」
「え、」
「今日だって何も怒ってねーんだけど」
「直接言えってきたから怒ってると思った」
ボソボソと話すので聞き取りづらいが、返事が返ってくるだけ進歩だと思う。だから聞き逃さないように集中する。どうやら今朝のマイントークのことを言っているらしい。そんな怒ってるように見えるか?トークを見てみたがわからない。
学校につき、俺は部活あるからと校門で別れようとしたが引き留められた。なにかと思えば「帰りは先に帰ってる」そうだ。このやりとりって知らない人が聞いたら付き合ってるみたいだよな、なんてどうでも良いことを思いながら、頷いた。
数歩歩いたとろこで肩をたたかれる。
「うお!ビックリした」
「すまない」
「柳か……いつからいたんだ?」
「ちょっと前からだ。今のが転入生か?」
「そ、道がわからないって言うから案内してた」
「どんな子だ?」
「暗い」
即答すると柳が珍しく少し笑った。
「いやマジで。会話なんてポンポンできないし、喋ったと思ったら声小さいし」
「そうか」
「興味あんの?」
「ああ、おもしろくなりそうだ」
ニヤリと笑う顔はあまり柳っぽくなくて、もしかして仁王かと疑い頬を引っ張る。でも化粧をしている感じはなかった。ヅラを被ってるだけかと思い、髪を引っ張ってみたがちょっと抜けただけだった。本物の柳だった。
「結構痛かったんだが」
「柳君の髪の毛ってサラサラね、どのシャンプー使ってるの?うふ!」
「サラサラか、比較のために丸井の髪の毛を少しいただこうか」
「ごめんなさい!わざとじゃないんです!」
開眼しながら手を伸ばされる恐怖は中々味わえないので、ある意味俺はラッキーボーイ。
でも本当に抜かれると思わなかったし、嬉しそうにティッシュに包まれた時、さっきとは別の恐怖に震えた。
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