二時間目の授業は美術で、二人一組になり互いの顔をデッサンするというものだった。いつもなら仁王と組むんだけど、どう考えてもみょうじがポツンとなるのが目に見えてわかる。とは言え奇跡もおこるかもしれない。観察してみるが、焦る様子もなく声をかけようと試みる様子もない。ただボーっと座っているだけ。もしかして、非常にやる気がないのでは。
「丸井、どうするんじゃ」
「どうって……」
同じようにみょうじを見ながら問う仁王。ほっといても良いんだけど気になってしまう。こういうお兄ちゃん根性がたまに嫌になる。
「あー、ほっとけねーわ。くっそー」
「ほな俺は別んとこ行くぜよ」
「悪い」
「からあげさんで許しちゃる」
あんなやる気ないやつに声をかけるのは癪だ。でもそばに行くと、目をクリっとさせて「一緒にやる?」と心なし嬉しそうに聞いてきたので、まあ良しとしよう。
「後で仁王に食堂のからあげおごれよ」
「仁王?」
「銀髪の奴、みょうじが一人だから俺に行かせたんだ」
「銀髪の仁王、良い人」
まるでAIが初めての言葉を記憶するように復唱した。向かい合ってデッサンを始めるものの描いては遠くを見る。それがすごく気になって自分も集中できない。みょうじのスケッチブックを覗くと、そこには爽やかで大人っぽい顔が描かれていた。まだ完成していないとはいえ俺じゃないことはわかった。
「おい」
「え?」
「それ俺じゃないよな、誰?」
「私の推し」
「おし??」
「丸井みたいに赤髪でアイドルで可愛さも兼ね備えたイケメンで真っすぐで明るくてたまに心弱くて歌が大好きで、辛い過去があるのに前向きでギターも上手くて」
「まてまて、ストップ!」
「まだあるのに……」
初めて流暢に喋っているのを聞いた、それも興奮気味に楽しそうにだ。それはまあ良いんだけど、今何の時間かわかってんのか?隣を見てみろ、ものすごく引いている。俺も引いている。少し離れたところにいる仁王の耳にも届いたのか、一人めっちゃ楽しそうに笑っている。
「あのさ、今は俺の顔描く時間なんだけど」
「うん、でもどことなく似てるからつい……」
「ついじゃねーし、俺を描け」
「丸井って自分大好きなんだね」
は?いや今そんな話してなかったくない?なに俺がナルシストみたいになっちゃってんの?微妙に成り立たない会話に頭を抱えそうになっているとチャイムが鳴った。俺はすぐさま片づけて教室に戻った。
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