お昼休憩になり仁王と屋上へ行こうとするとみょうじが慌てて寄ってきた。
「どうした弁当忘れたか?」
「違う、からあげ」
隣に仁王がいるからか、いつもより更に声が小さい。仁王は聞き取れなかったみたいで、「ああ」と言う俺にどういうことだという顔をしていた。
「仁王、みょうじがからあげ奢るって」
「え、なんで」
「さっきのお礼」
またもや仁王はわからなかったらしく、俺に目で訴えてきた。
「あれは丸井に言うたんじゃけど」
「むしろ俺も奢られて良い立場かと」
「ねえ、行かないの?」
ぎゅっと握られているお弁当。このなんてことない会話も、みょうじにとっては勇気振り絞ったんだろう。ついでに仁王とも知り合いになっておけば俺も少し楽になるかもしれない、そんな自分の都合で二人に食堂へ行こうと言い教室を出た。
空いている席を探していると、大きくふられる手に気が付く。そこには幸村君と真田と柳がいた。みょうじが若干心配だったが、あまりに若干すぎて一瞬で心配は消えた。いつものように腹減ったーと座るが、みょうじは戸惑ってたので椅子を引く。そこにおずおずと座った。
「はじめまして、だよね?俺、幸村って言うんだ」
「俺は真田だ」
「柳連二だ」
ものすごく簡単な自己紹介にぶつぶつと名前を繰り返し呟いている。みょうじなりの記憶の仕方かもしれない。
「みょうじなまえです」
周りのガヤガヤとした音にかき消されたが、雰囲気で察した幸村君と柳は「みょうじさん、よろしく」と答えた。それに対して真田は「声が小さい!」と大きすぎる声で言うもんだから、みょうじの顔は真っ青になった。
「気にしなくて良いから、こういうキャラだから怒ってるわけではない」
すかさずフォローをするがたぶん聞こえていない。小さく震えているのでどうしようかと思ったが、意外な人物が動いた。
「さて、からあげさんが売り切れてしまうぜよ」
そう言ってみょうじを上手いこと連れ出した。ナイス!たまにはやるじゃねーか!心の中で盛大に拍手を送っといた。
「真田、あいつちょっと違う次元に生きてるからそっとしといてやって」
「そうだよ、せめてもう少し笑顔で言ってあげたら?」
「心を閉ざした確率72%だな」
「む……すまん」
「それより柳、俺の髪マジでなにすんの?ずっと気になってるんだけど」
今朝からずっと不安だったことを恐る恐る聞くと、藁人形に入れたと答えた。今度は俺が青ざめていると、冗談だ捨てたと言われた。そうであってほしい。
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