みょうじがきてちょうど一週間たった。昨日の日曜日、みょうじと母は秋葉原に出かけていたらしい。お土産にもらった萌え萌えプリンはすぐに食べた。母はなんか別の世界に紛れ込んだ気分になったと言っていたが、みょうじはすごく満足そうに買った物を広げていた。その中にPSPBITAのソフトがあった。見せてもらうとブロックを使うRPGで、ちょっとおもしろそうだなと思った。
たぶん、それのせいだろう。教室でみょうじがいつもに増してどんよりしているのは……。
「みょうじどうしたんじゃ?呪われとるん?」
「たぶん、ゲームのしすぎだと思う」
「ほんま赤也と気合うじゃろな」
仁王の言う通り、誰かに呪いをかけられたような暗さだ。遠くから見ても目の下が黒いのがわかる。みょうじが一人で登下校できるようになったから朝は家で会うことがない。なのでこんな状態だというのは俺も今知った。
仁王にええんかと聞かれたが、自業自得だし俺にはどうすることもできない。いやでもゲームしてたから、というのは俺の想像であって実際は違うかもしれない。
「なあ、体調悪そうだけどどうした?」
「超絶眠い。ゲームしてたらいつの間にか朝になってた。私がゲームする時だけ神様が時間のスピード速めるのすごく意地悪だよね、まだこれからだったのになんで学校ってあるんだろう。人って寝なくても生きていけるように――」
徹夜テンションのせいか話が長くなりそうだったからそっとその場を離れる。心配した結果がこれだったので聞いたのは無駄だった後悔した。しかしみょうじはそれに気が付いていないのかまだ一人で喋っている。周りは怯えているし、仁王は楽しそうだ。必要以上に関わりたくない俺は自分の席で先生が来るのを待った。
それなのに一時間目が終わったあと先生が俺に小さく手招きしてきた。なんだか嫌な予感がしつつも、そばまで行けば小声で話しはじめる。
「みょうじはどうしたんだ?」
「みょうじ?直接聞いたら良いじゃないですか」
「そう言うなよ。あれだけ負のオーラ出されたら近づけないだろう。それに丸井は……」
俺がなんだ、そう続きを促そうとしたが先生は周りをキョロキョロしたので黙って待つ。近くに人がいないのを確認して更に小さな声で「一緒に住んでるじゃないか」と言った。
「は……?マジでそれ二度と言わないでほしい」
「わ、悪い!それで、どうしたんだ?体調悪いのか?」
「ゲームのしすぎです」
「ゲーム?」
「ゲーム」
なんだそっか良かった〜とスッキリした顔をした。体調悪いのかよっぽどのことがあったのかと思ったと笑いながら話す。そんなに心配ならやっぱり自分で声をかけたら良いのに、直接聞けないなんて教師として大丈夫なのだろうか。
一人で過ごしているみょうじにも心配している人がいると知ったら少しは心を開くんじゃないだろうか。そんなお節介思考で声をかけた。
「先生も心配してたぞ」
「帰りたいゲームがしたい」
成り立たない会話に少しイラッとして「ゲームするのは勝手だけど、せめて元気そうにふるまえ」と言ってしまった。みょうじは注意されたことにわかっていないのか何かをふりまく仕草をした。ふるまうってそういう意味じゃない。
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