すぐに部屋へ戻ってくれたらごまかしようがあったのに、その場に留まるからもう言い訳ができない。とりあえずなんて声をかけるか悩んだが、一番に口を開いたのは柳だった。
「やはりな」
「やあ、偶然だねみょうじさん」
いやいやこの状況で偶然っておかしいだろい。でも幸村君が黒と言ったものは黒になってしまう。
「ほんと、偶然……あは、あはは、あはははははは」
「あああああ呪われる!笑ってる!呪われる!」
目をギョロギョロさせて壊れた人形のように笑うみょうじは正直こわかった。いまだに理解できていない赤也は怯え切っている。人間だとわかっている俺でさえこわいからすごく気持ちがわかる。
「赤也、幽霊なんていない。こいつ人間だからみょうじなまえっていう人間だから」
「に、にんげん?」
信じられないと目で訴えてきたので俺は強く頷いた。俺の手を力一杯握りしめみょうじの方へ目をやる。
「驚かせて、ごめん……」
「俺の方こそすんませんっした……」
人間だと納得した赤也だったがまだ疑いが抜けないのか、指先にあるみょうじの足をツンツンと突いて「ほんものだ」って呟いた。
「で、どういうことなんだい?」
「思っていた以上におもしろいな」
「説明、いるの?」
ものすごく聞きたいという顔をしている幸村君と柳。めんどくさいと思い、いらないという返事を期待して聞いたものの、「いる」と即答されてしまった。
「――と、まあそんなわけだ」
もういっそのこと全員に話してしまえ、そう思いリビングへ戻り簡単に掻い摘んで説明するが「へえ」と興味なさそうな返事が返ってきた。柳はみょうじに詳細を聞きたいけど聞けないというオーラを出している。俺も事情ってなんだよとは思ったけど、まあ聞けないよな。隣に座っているみょうじに改めて自己紹介すれば、と声をかければ両手をグーにしてこう言った。
「私も、ゲームしたい!」
まさかの自己紹介飛ばしてゲーム欲を丸出しにしてきた。当然、ポカンとなったが赤也が真っ先に復活した。
「やりましょ!俺強いっすよ!」
「私の方が強い。負けない」
「じゃあ勝負しましょ!」
みょうじと赤也じゃゲームしている時間の差はでかい。そんなみょうじに勝てるわけがないのに、それを知らない赤也は「負けても泣かないでくださいね」なんて余裕を見せていた。
「あれ?丸井、私のデータがない消した!?」
「これは弟達のやつ。みょうじのはさわってない」
ものすごい剣幕で詰め寄られたが答えると安心して戻っていった。うっかりデータを消してしまわないようみょうじのは触るなと弟達によく言い聞かせようと思った。
「ところで仁王はなんでダッシュしたの?赤也が心配だったとかじゃねえだろ?」
「心外じゃな」
「え?マジで?お前意外と優しいんだな」
「当たり前じゃろ、ただの野次馬じゃ」
「いや野次馬かよ!赤也めっちゃかわいそう!」
どうりでニヤニヤ見てるだけだったわけだ。心配したのは俺だけだったんだな……赤也の方を振り返ると、秒殺されたらしく床とお友達になっていた。ちなみにみんなが帰った後スマホを見るとみょうじから『トイレ行っても良い?』『もう我慢できない』とマインが届いていたので謝った。
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