最近、みょうじがたまに顔を小さく左右に揺らす。今もゲームをしながら顔をふっている。ただの癖だと思っていたが、今理由がわかった。
「みょうじ、前見にくいんだろ」
「うん」
「髪切りに行けば?よく見りゃこっちからも目が見えない」
「嫌だ」
「じゃあピンでとめたら?目悪くなるぞ」
「嫌!」
切りたくないなら横に流せばという提案も却下されてしまった。伸ばしているわけではないなら何が嫌なんだ。中々言おうとしないみょうじにしつこく言うと渋々答えた。
「目、見られるの恥ずかしい……」
「あれ?でもここ来た時短かったよな?」
「あれはお母さんに無理やり連れていかれたの」
このくらいが落ち着くんだ、と話すみょうじだが、やはり目が見えないとこっちが落ち着かない。
「でも余計に幽霊っぽいぞ」
「余計にってなに?なんでそんなに幽霊に間違われるの?私生きてるのになんで?どの辺が幽霊っぽいの?」
「雰囲気暗いところとかあまり話そうとしないところとかその髪」
「え……私そのものが幽霊ってこと?私死んだことに気が付いてないの……?」
嘘でしょ、と言いながらペタペタ体を触ったり影を確認したり鏡をのぞき込んでいる。そんなにショックだったのか、なんだか悪いことをした気分になった。しかし逆に考えたらチャンスかもしれない、そう思い早口で押し切ろうとした。
「いや生きてるけどそのうち幽霊にも間違えられて戻って来れなくなるかもしれないし、とりあえず前髪を切ろうぜ」
「……う、うう」
みょうじはまだ決心がつかないようで切るという返事は結局なかった。
いつものように仁王と飯を食おうと教室を出るとみょうじが追いかけてきた。
「き、今日は赤也君もいる?」
「おう、みんなで食べるけど」
「わ、私も一緒して良いかな?」
珍しく自分から声をかけてきたと思ったらまさかの発言。こんなに友好的になったなんて俺は嬉しい……まるで孫を見守るおじいちゃんの気分になった。他人から見たらどうってことないことでも、みょうじにとっては難関なことですごく頑張ったのがわかる。だから駄目とは言いたくない。でも勝手に連れて行って良いものか、チラリと仁王の様子を伺うとバッチリ目が合った。
「いいじゃろ別に」
なんてことないように言ってくれたので安心して三人で屋上へむかった。みょうじは「仁王君は良い人」と呟いていた。テニス部の連中はなんだかんだみんな面倒見が良い。
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