いつもよりハードな練習で、帰ってきたときはヘトヘトになっていた。明日が休みで良かった、と思いながらお風呂につかる。疲れを癒すようにまったりしていると突然ガチャリと扉が開いた。
「……前にノックしましょうって言わなかったっけ?」
そこに立っていたのはみょうじだったのでそう声をかけると無言で閉められた。入浴剤を入れていたのでなにも見られちゃいないが羞恥心はあるわけで、またもやキャーとでも叫べば良かったと思った。
「お風呂あいたぞー」
リビングで座っているみょうじにタオルで髪をふきながら声をかけると、勢いよく立ち上がった。またもや無言でその場を去ってしまう。今日はいつも以上に変だなと思ったが声をかけるタイミングがわからない。夕食も食べたらすぐに部屋へこもってしまった。いつもなら怒られるまでテレビを占領してゲームをするのに。
「みょうじのやつどうしたの?」
土曜日の今日、みょうじは学校がなく一日家にいた。今週は母も仕事がなく家にいた。何かあったんだろう、そう思い聞いたのに母は困ったように「う〜ん」と言うだけで答えてはくれない。
「なにかあったんじゃねーの?」
「あったはあったんだけど……想定外というか」
「なんだよ」
「私の口から言うのもなんだか」
「え、マジで何があったんだよぃ」
「ブン太、男なら自分で聞きなさい」
「いや、それだけ渋られるとこわいんだけど」
「男はガッツよ!」
両腕でガッツポーズをつくり頑張れと言ってくるせいで、返り討ちにあいそうだなと遠い目をしてコーヒー牛乳を飲んだ。俺だってゆっくりしたいのにはやく行けと目線で訴えられて居心地が悪く、重い足を動かして階段をのぼる。
ノックをしても返事がないので「開けるぞ」と一言声をかけ間をあけること三秒。そっとのぞくと部屋の隅で丸くなっているみょうじが見えた。中に入り椅子へ腰をおろす。
「おーい、どうしたんだよ」
みょうじはゆっくり顔を上げ俺を見て眉を寄せた。
「誰かと喧嘩でもしたか?」
「……違う、けど、困らせちゃった」
「なにがあったんだ?」
「今日、お母さんから連絡がきたの」
「みょうじのお母さん?」
「そう……」
暗い顔をしてそう話すみょうじ。しかもそこで会話が止まるから、もう帰ってこなくていいとか身内に不幸があったとか、そんな連絡だったのではと嫌な想像をしてしまった。
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