席についてようやく鞄を開けてみるとかわいいキャラクターのお弁当袋が見えた。誰が作ったかわからないけどお昼に頂こう。それから入っていたのは、これまた可愛らしい手帳とスマホ。以上。
あれ?勉強道具一切入ってないね?
机の中を見ると、教科書がギチギチに入っていた。置き勉してるようだ。信じられない。勉強は難しいけどその分やりがいあって楽しいのに!それに現実の私は塾行ったり頑張っているというのに、夢の私はしなさすぎなのでは。いや、夢の中でくらいしたくない!という本人ですら気づかない本音の部分が強くでているのかもしれない。
とりあえず一時間目の教科書とノートを出してみる。ノートには授業内容はとくに書いておらず、ひたすら落書きがしてあった。勉強より絵の方が苦手なので、現実でも頑張ればこのくらい描けるのかなあ、と淡い期待を抱く。
ほうほう、とノートをめくっていると隣に人がやってきた。条件反射で顔を上げると、そこにいた二人は一番会いたかった人物だった。思わず歓声に近い声がでる。
「おおおお!白石!と、忍足!」
「おん……おはよう」
「おー、今日なんでサボったん?」
「へ?」
「部活」
歯切れの悪い白石と元気な忍足。サボった、と言う忍足だがもちろん心当たりなんてない。授業には間に合っている。部活ってなんだ?私は帰宅部のエースたぞ!
「部活……?」
「マネージャー嫌になったん?」
「え?もしや、まさか、テニス部の!?うわぁ!やりたい!!!」
夢とはいえここまでラッキーハッピーで良いのか!?この流れは完全に私がテニス部のマネージャー!!!もしかしてすでに誰かの彼女だったりするのか!?ピュアとは言えない期待を胸にしまいつつ、部活をやりたいとアピールする。
「ほな、放課後はちゃんとおいでや」
小さい子に言い聞かすように頭をポンポンとする忍足。
おお、ちゃんと手が大きくて男の人だと意識してしまう。そっかー!やっぱりここではテニス部のマネージャーなのか!すごく都合が良い起きたくない!!!
白石は少し眉間に皺を寄せて、私と忍足の会話を黙って聞いていた。サボった私を叱りたいけど、我慢しているのだろうか。
「放課後は行きます、ごめんなさい」
「ええよ、たまにはそんなこともあるわ」
怒っていると判断した私は謝り許してもらえたが、白石は複雑そうな表情のままだった。
なにはともあれ放課後テニス部のみんなと話ができるのか、楽しみでしょうがない。ルンルン気分で授業を受けていると横から視線を感じる。なんだ、と思って見ると忍足と白石が不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。なんかよくわからないけど目が合ったので変顔をする。白石は目を点にしていたが、忍足は「ぶっふぉ!」と噴き出した。それにつられたのか白石も「ふはっ」と肩を震わせている。
「忍足と白石〜仲良く廊下立つかー?」
「ちゃうねんて先生〜」
「俺は忍足の笑い方に笑っただけです」
「せこっ!白石せこい!」
「忍足授業終わったらプリント集めて職員室まで来てな」
「嘘やん!なんでなん!」
「ドンマイ」
この後大人しく授業を受け、忍足はちゃんと職員室までプリントを運んだ。すぐに戻ってきて、私が変顔するからだと文句を言われた。そもそも授業中によそ見するから悪いのに。
「いくら私が可愛いからって授業中あんなに見つめるからやん」
「え?なんて?」
「邪心を取り払ってあげよう思っての変顔やで、感謝してや」
「それはボケなん?本気なん?」
若干本気で聞かれてる気がして思わず戸惑う。なんでボケだと思われたのか腑に落ちないが、忍足に対して白石がフォローしてきた。
「みょうじさんが真面目に授業受けてるんがめずらしくてな」
「いつでも真面目やん!」
本気で答えると二人はヒソヒソと会話をしだした。今朝も部活来なかったしどこか頭を打ったのではないか、なにか拾い食いでもしたんじゃないか……って聞こえてますけど!
でも確かにノートは落書きしかしてなかったし不真面目だったんだろうな。遠い目でそんなことを考えていたら白石が優しい声でこんなことを言った。
「みょうじさん、しんどかったら保健室ついていくからな」
どんだけ夢と現実の私はかけ離れているんですかね!!!
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