鼻歌交じりに撮影していると、オサムちゃんが声をかけてきた。
「気づいとるか?その鼻歌も録音されとるで」
「は!しまった!」
夢とは言え、大好きなみんなが動いているところ!ましてやテニスをしている姿が見れるなんて夢のようで!いや!夢なんだけど!
嬉しさのあまり、ほほほーじのメロディーを奏でてしまった。せっかくみんなの決め台詞も録音できたかと思ったのに、これじゃあ無理そうだな。あれこれ脳内反省会を開いていると、休憩の号令がはいったので一度静止ボタンを押す。
「みょうじ」
「スコアなら手伝いませんよ」
「そうやなくて、なんか困ったらいつでも言いや」
「え……先生っぽいこと言うんですね」
「思い切り先生やわ!」
夢の中の私は力がなくて、ツッコミ担当で……なにか悩み事があったのだろうか?
この私は特に困ってることはない。よくわからないけど現実の私の悩みといえば、受験くらいだった。それが今やここではなんの心配もない!あえていうなら、辻褄が合うように私の記憶もちょっとくらい改ざんしてほしかったくらいだ。なんてこと言えるわけがない。
「なにかあったらお願いしますね、たぶん」
それだけ返すと、そんなに頼りないかとショックを受けていた。
撮った動画を確認するためスマホをまた手にとると、一氏がやってきた。
「さっきから何撮ってたん」
「みんなのプレーやで」
「なんで?」
「私テニスわからへんから、自分でフォーム見た方がはやいかなと思って」
「ふうん、わからへんねえ……」
嘘やろ、とでも言いたげな目つきに魔法の言葉をつかう。
「小春ちゃんの、送ろうか?」
「ほんまか!お前話わかるやつやな!」
「ほな後で送るね」
「おん!絶対やぞ!」
約束したからな!と何度も言う一氏。その度にわかったと何度も返し、ようやく解放された。そんな様子を見ていた白石が何か言いたそうにしていたが、結局何も言ってこなかった。白石って結構フレンドリーに会話をするもんだというイメージがあったが、どうも違うらしい。何かを言いかけてはやめている。それに比べ、忍足君は思っていた通り明るくて元気だ。
「みょうじ!俺のも撮ってくれた?」
「もちろん、でも常に動いてるからスローじゃないと見にくいかもやわ」
「俺、スピードスターやからなあ」
うんうん、と一人納得しているようで良かった。スマホだと画質あまり良くないな、と思いながら再生していると今度は財前がやってきた。
「俺のも撮ったんすか」
「そりゃあね」
「許可なしにキモイっすわ」
「オサムちゃんの許可とったし、あとでオサムちゃんと白石に送ったら私のスマホからは消すで?」
「当たり前やわ」
ハッと鼻で笑われてしまった。なんでこの子はこんなにあたりがキツイんだ???私は特別誰かが推しというより、四天宝寺のみんなが好きで、そりゃ個人も好きだけど、みんな集合時のノリというか雰囲気がなにより好き!なのに、私がいることによって大好きな雰囲気がギスギスしてしまうのはいただけない……。
「なにをそんなに怒っていらっしゃるの……?」
「別に、いつもとちゃうから調子狂う」
「そんなに違う?」
「全然ちゃう、そないアホっぽくなかった」
「あ、あほおおお!?」
「どっか頭うったんちゃう?」
「ええ、そんなに?大丈夫だよ?問題ないよ?」
上から下までジトッと見た後、何も言わずにその場を去ってしまった。
ここでの私は勉強はできないキャラっぽかったのになあ、顔か?表情があほっぽいのか?そう結論付けた私はキリッとした表情を作る練習に励んだ。
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