トラブルトラベル8

二人とは乗り換えの時にバイバイをし、調べた通りに歩けば自分の家であろう場所へたどり着いた。
もし、間違っていたら。そもそも両親は両親なのか、そうだとしても私の本当の両親ではないだろうし結局のところ他人と生活をするということになるのでは……?

そんな恐怖を抱きながらカバンに入っていた鍵を差し込むとスッまわすことができた。
やっぱりここが家で間違いないんだな、ゆっくりドアを開けのぞき込む。ほんのり甘いような匂いがした。私の嗅ぎなれている家の匂いではなかった。
玄関には靴がなく、下駄箱を覗いてみたら母と父のであろう大人っぽい靴が入っていた。ということは一人暮らしというパターンはなさそうだ。

「ただいま〜」

勇気をだして声をだしてみるとすぐに「お帰り」という返事が聞こえる。
声のした部屋へ行くとそこには、おっとりとしたいかにも天然ですと言わんばかりの母であろう人が優雅にカップを持っていた。

「なに、してるの?」

「アフタヌーンティーよ」

「お友達来てたの?」

「ううん、掃除が終わったからくつろぎたくて」

「えっと、でも、今20時前なんだけど……」

「えぇ?」

壁時計を見て「あらあらまあまあ」とゆったりと驚いて、晩御飯どうしようと呟いた。
そして私をチラリと見てくる。

これはもしかして「しょうがないなあ私が作るよ」待ちか?
そうなのか?良い大人が、しかも母親であろう人が、子供に察してほしがるのか??
私、察してちゃん好きじゃないんだよな……と遠い目をしかけたものの、そういえばお弁当って自分で作ってることになってるし、こっちでは料理ができるのでは?と考えた。

もしそうなら現実ではできないことが当たり前のようにできるかもしれない!特技は料理!なんて言ってみたかったので、ちょっとした好奇心から待ち望んでいるであろう台詞を吐いてみた。

「私が作るよ」

彼女はニッコリと笑顔をつくり両手をそろえて喜んだ。

「え〜いいの〜?なまえちゃんのごはん美味しいから嬉しいなー」

なんか期待されてるけど今の私の腕前が現実並みだったらどうしよう……そんな不安をもちつつ冷蔵庫をのぞいてみる。たまご、豚ロース、ほうれん草、キャベツと玉ねぎ。

え、少なくない!?これしか材料ないの???
我が家は母が料理好きでパンもお菓子も作るから冷蔵庫は常に潤っている。でもここの冷蔵庫はさも料理なんてしません、みたいな中身だ。スッカスカだ。でもやたらビールとお茶だけは入っている。

なんとなく頭に浮かんだメニュー。まるで体が覚えているようで、あまり深く考えなくても手が動く。こんなにテキパキと料理できたのは初めてだ。この感覚、持って帰りたいな。なんて思いながら作業をしていると一時間もしないうちに出来上がった。

ごはん、玉ねぎと卵のお味噌汁、ほうれん草のお浸しと生姜焼きにキャベツを添えて完成。

え?すごくない???料理の基本って本に献立で載ってそうじゃない???
あまりの感動に自画自賛をし、スマホで写真に残した。撮ったところでだけど、なんとなく撮っておきたかった。全く同じことができる日はくるかわからないからね!

テンションが上がったまま食べ終わりお風呂へとつかる。帰宅した父に軽く挨拶をした。お風呂から上がった時にはビールを手にしていたので、あのビールはきっと全部父のなんだろう。
忘れないうちに動画を白石とオサムちゃんに送り寝た。夢の中でも寝れるんだな〜なんて、呑気なことを思いながらそれはもうグッスリと寝た。



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