言ってることはわかるので

「私、神様の仲間である証を確かに持ってはいるんですが、これでも人間なんですよ。時空を操ることができるというだけで、私は人間なんです。でも、神様としての証を持っているために人間としての時間の影響を受けることができません。歳も取りません。怪我もしません。回復もしません。身体の時間を進めるか戻すかでしか、身体も成長しません。でも学ぶことはできるんです。受け取れるものを受け取ることはできるんです。だから、私はお母さんのいるこの世界で、お母さんの見てきたもの、経験して来たものを追体験しました。お母さんが実験材料として強いられてきたことを、私もやってみました」


 素晴らしい身振り手振りと語り口。うん……確かに熱意や想いは伝わってくるよ、時寧ちゃん。でもなんだか黒歴史を掘り返されてる気分です。もう女優にでもなればいいんじゃないの。


「追体験を終えて真っ先に思ったのは、愛って何?でした。そして、どうして家族間の仲が悪くなるのか、愛し合ったから結婚したはずなのに、と考えました。愛し合っていても、いつか冷めるのが愛ならば、永遠に消滅することのない私は、なんなんだろうと考えました」


 ん? 何それ。なんで冷める愛が時寧ちゃんと関係すんの? ちょっとそこら辺もうちょっと説明してくれない?
 あ、もしかして子供は愛の結晶だって話?


「まぁ簡単に言うと、自分の親が仲良くしているところを見たいなって思っただけなんです」


 何やら吹っ切ったような顔で、時寧ちゃんはそうまとめた。


「すみません、突然現れてこんな話して……本当にごめんなさい。悩ませたいわけじゃなかったんです、でも私、本当はもっとずっとお母さんと話してみたいって思ってて、でも何を口実に近付いたらいいか……わからなくて」


 だんだんと時寧ちゃんの声に涙が混じり始める。そんな時寧ちゃんを眺めながら、私って泣きそうになるとこんな顔になるのかぁとか考える。


「やっぱり、信じてもらえませんよね」

「でも本気なんだろうなぁっていうのはわかったよ。信じるかどうかは別にして話すけど、そういう理由なら私は時寧ちゃんの望む通りにしたいと思う」

「え……」

「追体験したって話が本当なら、その、まぁわかると思うけども。やっぱりお父さんとお母さんの間で笑いたいよね。喧嘩してる2人を見てるのはつらいよね」


 まぁその、あれだ。同情した。というか同調した。イェースその意見にサンセーイくらいの軽さだけど。
 でももし時寧ちゃんの話が本当で、真相なんだとしたら、それってめちゃくちゃ寂しいと思うんだよね。個人差とか環境の差はあるだろうけど、ぼっちのつらさは知ってるつもり。今も昔も、私はぼっちだ。少なくともここ10数年は職場の人としか会話をしていないくらいには私はぼっちだ。

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