問題児なのは私か彼女か

 そのつらさが我が子かもしれない子に降り掛かっていると言うのなら、その願い叶えてみせようじゃあないですか。


「私、時寧と一緒にこの世界出るよ」

「本当ですか!?」

「うん。それで、また色々質問することになるんだけど、いいかな」

「はい、もちろん!」


 やったねたえちゃゲフンゲフン。これはあかんやつや。
 時寧ちゃんはいそいそと私の側に来て、嬉しそうに笑った。なんだよ私もニコニコしてればそれなりに見えるじゃあないですか。運気上がるんじゃない? 恋愛運とか。
 というわけで、私もニコニコを心掛けることにするね。にぱー☆ 村は血の海になりましたとかテロップ出てきそうだからやっぱりやめる。


「もし私が別の世界に行っちゃったら、この世界での私の存在ってどうなるの?」

「そのまま放置すると、行方不明ってことになります」

「うわ、それ職場に迷惑掛かるな……別の世界に行くまで、一ヶ月待ってもらってもいい?」

「それはもう、全然構いません!」


 あ、良いんだ。案外緩い感じなのね。
 ともかく一ヶ月待ってもらうことになったけど、その一ヶ月間時寧ちゃんと同居することになった。理由はいつでも私が質問できるようにってことが第一だけど、時寧ちゃんが一緒に暮らしたいと申し出たことも大きい理由。時寧ちゃんはお腹が空くことがないらしく、そんで汚れることもないらしいので許可した。便利な身体だな。
 私は格安の小さいアパートに住んでるわけなんだけど、別段何かやってるわけでもないし、時寧ちゃんがいて困ることは、特にはなかった。食べる時はさすがに複雑な気分になるから、時寧ちゃんの口にも入れたりする程度の生活変化。だって仕事でほとんど部屋にはいないし、問題なく過ごせている。

 で。
 私は仕事を辞めることにした。血縁とはもうとっくに疎遠になっているし、深い付き合いの人間もいない。退職願も提出済みで、あとは期間いっぱい引き継ぎをして退職だ。これからトリップするってのに、なんか生々しくてちょっと複雑だ。
 一応時寧ちゃんの話が本当のことではなかったときのことも考えて、副業は残してある。惰性で生きていた分膨らむだけ膨らんだ貯金と副業があれば次の職を見付けるまで食い繋ぐことはできると思う。
 もし時寧ちゃんの話がただの妄想であったなら、情さえ移ってなければ即慰謝料ぶんどってから出て行ってもらう感じですね。うん。

 でもね、この子本当に何も食べないんですよ。お風呂に入ってる様子もないのに、体臭も全くしない。紙で作った私と話をしてる気がしてきて、もしかして病んでるのは私のほうで、時寧ちゃんという存在も私のほうの妄想かもしれないと思い始めた。それは無いと言い切れないのが地味に怖かった。

ALICE+