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「立香くんじゃん」
趣味の深夜徘徊で立香くんを発見したのでラッキー。なんでまだ制服なのかは知んないけど。
「えっと、こんばんは」
「あそっか、話したことなかった」
うっかりしてた。いっつも画面越しに見てるから、なんか普通に話しかけちゃった。
「あー、カルデアのただの一職員、名前です」
「あっあの、お名前は、知ってます。前にマシュがすごく頭のいい人だって言ってたから」
「ふぅん」
マシュって、私のこと知ってたんだ。そういえば1回だけドクターに言われて無菌室に入ったな。確かシャーロックホームズについての質問に答えてあげて欲しいとか、そんなんだった。あぁ、そうだ。『不可能な事を消していって、最後に残ったものはどんなにありえないように見えても真実に違いない。』 あの言葉についてえらく熱心に質問された気がする。
「何してたの?深夜だけど」
「えっと、ちょっと寝れなくて。窓の外、見てました」
「ウケる。真っ暗なだけだけど」
「吹雪もありますよ」
「腕、怪我してんじゃん」
「え?」
そこ、って指さすとめちゃくちゃビックリしてる。
「えっ?うわ、切れてる!?嘘!?あれっ自覚するとすごく痛い!!」
「分かるそういう時のささくれとかスゲー痛いよね」
「ささくれレベルの傷じゃないんですけど!?なんで気づかなかったの俺!?」
「指先ってさぁ侵害受容器っていうのがあるからささくれってめっちゃ痛いらしいよ」
「今いりますその情報!?って、わっ」
「はい医務室いこ」
手を引っ張って連れてくことにした。なんか余計なこと考えてるな。心配かけるとか、不甲斐ないとか。
「えっでも、流石に、誰もいないんじゃ」
「サーヴァントは?」
「それは、」
やっぱり。レイシフトが終わった後だからとか、弱い所を見せたくないとかだな。
「気づかなかったのは気づきたくなかったからだよ」
「………」
「身体は気づいてた。だって無意識に人に見せないよう君は右腕を死角にしてたよ」
「え、うそ」
「うそ」
「えぇ…」
勢いで医務室連れてきちゃって手当してあげたけど、包帯とか人生で初めてやったから楽しくなっちゃって立香くんをミイラ男にしてしまった。可愛かったので写メしたし、今度マシュにも見せてやろ。