2

再会は次の夜だった。前回と同じように、気づいたらここに立っていて、淡いピンクの空と、溶けるような雲に見とれていた。
つんつん、と腕を突っつかれて振り向く。そこには前回同様、マシュマロの妖精みたいな人が立っていた。
「やぁ。良かった、また来てくれたんだね。話をする前に消えてしまったから、嫌われてしまったかと思ったよ」
消えたのは自分の意思ではない。夢なのだから、目が覚めたんだろう。
そう言うと、彼は目を丸くした。
「おや、夢を介してここに来ているのかい?ふぅむ、なんだろうね、本当に普通の女の子みたいだけど」
そういえば彼も夢の登場人物なのだから、別に好きにしてもいいのでは?そう思って彼の真っ白な髪を両手で頭を挟み触る。すごい、ふわふわだ。柔軟剤でも使ってるのだろうか。
私に好き勝手に触られてる彼は、またビックリしていた。固まっているので、後ろに回り込んで彼の周りを1周した。へぇ、なんか暖かそうな服だな。ここ寒くも暑くもないからあれだけど。
とりあえず見たいところは見れたので、今度は部屋を見渡した。殺風景だけど、オシャレな空間だ。花びらが散っているのは、外から入ってきているからかな。
キョロキョロと歩き回っていると、椅子を引く音がした。見れば、彼が手招きして椅子に座るよう促している。
呼ばれるまま近寄って椅子に腰をかけた。コトリと音がして、テーブルに綺麗なティーカップが置かれた。覗き込むと、透き通る色をした、紅茶だろうか、茶色の液体が注がれていた。
「さて、お話をしようか」
目の前のもうひとつの椅子に、彼が座った。せっかくなのでティーカップの中のものを頂こう。ふわりと香る花の香りのような匂いにつられ、1口飲むと今までに飲んだことがないくらい美味しい紅茶だった。
「気に入ってくれたかい?よかった、何せ普段は淹れる相手がいないからね」
それは勿体ない。これだけ美味しいのに。
「ありがとう。自分で分からないから嬉しいね。それじゃあ、そうだな。何から話そうか」
貴方は誰?私の記憶にはない人だけど、どうして私の夢にいるの?
「うーん、まずね、ここは君の夢の中ではないんだよね。私はマーリン。この塔で、世界の終わりの日まで生き続ける素敵な花の魔術師さんだよ」
うっそくさ。
「結構口悪いなキミ。でも嘘じゃないよ。ここは夢じゃなくて現実さ。紅茶も美味しかったんだろう?」
言われて、さっき飲んだティーカップを見た。中味は空だ。私がさっき飲み干してしまったから。
「じゃあ、次はキミの番だね」
私?私は…。ただの一般人だ。本当になんの特徴もない、この星でそれなりに生きた後死んじゃうであろう普通の人間さんです。
「だよねぇ。だって見たところ本当にただの女の子だもの。あぁ、名前は?…名前ちゃんだね。可愛い名前だ」
マーリンって響きも可愛いですよ。
「ふふ、そうかい?そんな事言われたの、初めてだぞぅ。あ、もう一杯どうだい?」
ください。
「いやぁ、また誰かとティータイムができるだなんて思ってもなかったな…って、名前ちゃん、もう行っちゃうのかい?」
?いや、まだ紅茶もう一杯貰いたいけど…。
「また来てくれるかい?って、キミにも分からないんだったね」
そこで、2回目の会話は終わった。