8

1人で寂しくないの?
「おや、今日は君からかな。…そうだね、寂しいといえば寂しいかな?」
そんなでもないってこと?
「どうだろうね。君たちとは多分、そこら辺の感覚は違ってきそうだけど」
…ふーん。
「でも、名前ちゃんがこうして遊びに来てくれるのは嬉しいよ。紅茶、おかわりいるかい?」
いる。
「名前ちゃんがもし、ここに1人で居ることになったらどうする?」
……………。
「うーん、つまらない質問だったかな。退屈に決まってるだろうからね」
マーリンは何ともなしにそう言って笑った。私はこの塔をもう一度見渡す。綺麗な所だ、別に、牢獄のように息苦しくも、狭苦しくもない。塔から見下ろす景色は夢のようで、(夢なのだけど)決して居心地の悪い所ではないし。
でも、ここで一人。ずっと一人。
そう思い返して、もう一度マーリンの方を見た。返事をせず見つめてくる私を不思議そうに、しかし楽しげに、マーリンは頬杖をついて見ている。
「ん?何かな」
にこにこと楽しそうだ。楽しそうに、見える。彼は私が現実の世界に戻れば、またこの塔に一人になるのか。
「そんなに見つめられると照れるなぁ。どうしたんだい、名前ちゃん」
太陽も見えないのに、いつだってここは明るい。柱の隙間から差し込む光が、マーリンの色のない姿に影を付けていた。
「今日はなにやら思案の日らしいね」
無言でいる私にマーリンは紅茶を注ぎ足した。相変わらず何も返せず、私はそれを飲み干した。
そこで、8回目の会話は終わってしまった。