10

「世界最後の日に、君は何をする?」
その話題、前にもやらなかったっけ?
「ちがうちがう。今回は、どんな終わりがいい?じゃあなくて、名前ちゃんならどんな終わりにする?という話だよ」
うーん…。
「やり残したことを全て終わらす?会いたい人に逢いに行く?それとも、何もせず、ぼうっとして過ごすかい?」
それ、1番大事なのが抜けてるよ、マーリン。
「ん?何かな?」
美味しいものを沢山食べる、でしょ?
「なるほど。それが名前ちゃんの答えかな」
テーブルに自分の好きな食べ物をいっっぱい並べて、好きな人と、好きな場所にいたいかな。
「そう。それは確かに幸せそうだ」
風の音もしないのに、どこからともなく花びらが目の前を通り過ぎる。1枚、また1枚とゆっくり落ちていく花びらに手を伸ばして、上手く掴めず取り逃してしまった。
でも、その日に世界が終わりますよ、なんて都合よく教えてくれるのかな?
「……」
テレビの電源を、プチッて消すみたいに…ある日突然、なんの前触れもなしに、全部消えちゃうことだってあるかもしれないよね。
「うん、それもそうだね」
マーリンはそう答えながら、風に飛ばされる花びらを、初めからそこに来ることが分かってたみたいに指で挟んで摘んだ。マーリンはしばらく花びらを眺めた後、ふっと指から離した。花びらは霧のように消えて、見えなくなってしまった。
「もしよかったら、その世界最後の名前ちゃんのパーティには、私も呼んでくれないかな?」
特別だよ。
「ふふ、やったぞぅ!あ、でも徒歩で行くから遅れると思うけど、よろしくね」
そこで、10回目の会話は終わった。