終わる。遂に終わる。
この世界が終わる。
私が終わる。
瞼を閉じたら、すぐに意識は消えてしまいそうでした。マーリンがいろいろやって、カルデアがやって来てひと騒動もあったけど、彼らはいつも通りにここを修復して、私を倒して帰って行きました。
きっと縁は結ばれました。マーリンの狙い通り、脆弱な私でも、あの少年なら呼んでくれる。そんな予感がします。
終わる。遂に終わる。
この世界が終わる。
足音がしました。砂利を踏みしめ、誰かがやってくる音。でも音よりも先に、花の香りの方に気づくのが早かったです。
「やぁ。約束通り、パーティにお呼ばれされて来たぞぅ!」
残念なことに、もう目は見えません。喉はとっくに潰れました。
何も言えず、動きもしない私の隣に、マーリンは「よっこらしょ」と言って座りました。おじさんくさいです。
「おにいさん!おにいさんだからね!今回はちょっと頑張りすぎたから、思わずよっこらしょが出ちゃったの!」
私は謝らなければいけません。せっかく徒歩で来てくれたのに、ここには美味しいものどころか、食べ物もろくに無いのです。
「うん。いいのいいの。私もとから食べ物の味とか分からないからね。君が毎回、紅茶やらマカロンやらケーキやらを美味しい美味しいって食べてくれるのが、私にとっての食事だったから」
悪びれもせず楽しそうに言いやがります。その声を聞きながら、なぜだか私は、あまり死ぬのが怖くなくなっていました。
「空が割れるね。そろそろ、お別れだ」
地響きのような、終わりの音が聞こえてきました。それでも、マーリンの声の方が、とても大きく響いていました。
「あのね、ボクは本当に、楽しかったんだけれど……君は………あぁいや、最期にこんな質問をするべきじゃないな」
楽しかったよ、マーリン。
「…………そうかい。それはなにより。それじゃあ、おやすみ、名前ちゃん」
「いい夢を」