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「えー、この度は、大きなレイシフトが無事成功し、大変喜ばしい限りでございます」
パチパチパチ、とまばらな拍手に手を挙げて答える。視界の端に「なんかはじまった…」と胡乱な目をしたドクターを見つけたが無視。
「つきましては、此度も頃合かと思い、毎月恒例のアレを開催致そうと思う所存であります」
そう言えば、「待ってましたー!」「ウォオオアストルフォーーー!」「ガヴェインさまァー!」などなど思い思い皆が騒ぎ始める。
「カルデア、推しサーヴァント投票大会、開幕ゥーーー!!!!」
ワァァァァ!!と歓声が上がる。皆、疲れてんな。盛り上がってるはずなのに、ゾンビの大群が雄叫び上げてるみたいに見えるし。

「名前ちゃんは誰に入れたの?」
「別にいいじゃないスか」
そう言って名前を書いた紙を適当にポイーっと投票箱に入れた。
「あんなに盛り上げてたのに!?」
「いや、ああすれば皆さっさと仕事切り上げてくれっかなって」
「そういうことか!」
露骨に呆れられたけど気にしない。だって早く寝たかったし。
「えぇ〜でも名前は書いたんでしょ?気になるなぁ…」
「書いたよ、ロマニアーキマンって」
「うそ!?!?」
「うっそ〜」
言い逃げて廊下に飛び出す。うしろからなんか言ってるのが聞こえたけどしらんぷりして自室に向かった。

無駄にだだっ広い廊下を歩いてると、向こうから人影が近づいてくる。どう見ても職員じゃないし、サーヴァントみたい。別にどうってこともないけど。
ただ通り過ぎようとしたら、向こうはそうでもなかったらしい。
「むぅっ、そなた!!!」
「あ、はい」
凄い可愛い人に話しかけられてしまった。真っ赤なドレスにスケスケの下着…が見えてるのは大丈夫なのかな、目は爛々と輝いていて、溢れ出る自信というかオーラが徹夜明けの目に眩しい。
「なかなかに美しいではないか〜!よいよい、召喚されて早々、眼福であるっ!何やら疲れが溜まっているように見受けるな、特別に余がこれを賜ろう!」
「ども…」
「うむ!」
ぽん、と何か手渡された。
「……薔薇…の…アロマ?」
薔薇があしらわれた小瓶には、小さく"aroma"と表記されてある。
「そう!アロマ…ア、ローマ!である!!!!!(デデーン)」
「なるほど(適当)」
ちなみにアロマはギリシア語とラテン語が語源だ。元の意味は"香料"。
「余のお気に入りだぞ!」
「あ、いい匂い…ありがとうございます」
「うむ!美人が目の下にクマなど作るものではないぞ!次に会う時は、晴れやかな顔で余に笑いかけて欲しい!」
ではな!と行ってしまった。

「…かわいい…」
貰ったアロマも皇帝も。なんかお返ししなくちゃな。