「最近名前くん、サーヴァント達とよく喋っているよね」
「そうかな、…そうかも」
二人きりの医務室で、月イチのメディカルチェックを受けていた時に、突然ドクターが話題を変えるようにそう言った。たしかに、俺の前までの事を考えると、誰かと話す、といった機会は格段に増えていると思う。それも、他の職員とかではなく、サーヴァントのみんなと。
「大丈夫かい?気づかないうちに、ストレスとか溜まってるんじゃないかな」
「ないですよ、そんなの」
「どうかな。1回熱でぶっ倒れてるんだから、あんまり説得力がないんだよなぁ」
そこをつつかれると何も言い返せない。不貞腐れて睨んでいれば、おでこを人差し指で軽く弾かれる。
「そういうのはね、本当にあとからしんどくなってくるんだよ。人見知りとか、治したいのは知ってるよ。でもね、ゆっくりでいいんだよ。ゆっくりね」
「ゆっくりって言ったって…たとえば?」
「こうして僕と目を見て話すだけ…とかね」
「いやでも、ドクターはもう安心するだけだから、意味ないんじゃないか」
「………意味なくないよ、そういう人とこそ、練習した方がいいんだから」
ね、と微笑まれてしまえば、子供っぽく意地を張ってしまったことが恥ずかしくなる。ここは患者らしく「はい」と言っておこう。
「あ、じゃあ、立香くんとでもいいかも」
「えっ」
俺がそう言うと、ニコニコしていたドクターが急にビックリした顔で声をあげた。
「最近は立香くんと話してても、ドクターと話す時みたく落ち着いていられるし、ずっと一緒に居ても頭とか痛くならないし、後から落ち込んだりしないし…楽しくて」
「………う、うん」
「話しかけてもらえて嬉しいし、その、…ドクター?」
「え?」
「なんか凄い顔引きつってるけど…大丈夫?」
「ふぇ!?」
おじさんのふぇ!?とかはじめて聞いてしまった。まぁまだギリギリおにいさんなのでアリということにしておいてあげよう。ドクターは俺が指摘したことに全然自分では気づいていなかったようで、顔半分、口元らへんを手で覆って、あー…と目を逸らした。
「……いや、なんでもないよ。ただ今朝食べたお団子がもう最後の1本だったかなーって考えてて」
「ちょっと」
俺の話ちゃんと聞いてくれよ。自分から言い出したくせに、他のこと考えてるとかなんなんだ。
「立香くんは俺の話ちゃんと聞いてくれるのに」
「ウグゥッ」
「え、ドクターホントに大丈夫?」
今度は腹にボディーブローを受けたような苦痛の声をあげて、何故か胸辺りを手で押さえて俯いている。
「タ、タンマ…」
「は、はい」
くるっと椅子を回して俺に背を向けたドクターの柔らかそうなポニーテールを見つめる。相変わらずふわふわでまさに馬のしっぽといった感じのポニーテールだ。ドクターはなにやらそっぽを向いて考え込んでいるらしいので、手持ち無沙汰な俺はドクターの背中の方に椅子を滑らせる。
もふもふと期待通りの感触なポニーテールを指でいじる。人差し指で毛束を巻き取り、くるくると巻いては解くと、ただでさえくせっ毛なドクターの髪がコテで巻いたみたいに跡がついて面白い。このまま巻き髪にしてJKみたいにしてやろうと奮闘していると、「名前くん」と声が聞こえた。
「はーい」
「何してるのかな」
「遊んでまーす」
「どうする気?」
「茶髪ポニテ巻き髪JKにしてやる」
しばらく遊んでいると、ドクターが頭を揺らして妨害してきた。俺が「ああ〜」と適当に悲しんでおくと、ようやくこっちを向く気になったのかチラッと横顔だけでこっちを見てきた。
「…あれ、ドクター顔赤「はい!もうおしまい!時間ですよお客さん!君は健康ですさよなら!」ええええええ」
そのままぺいっと部屋から追い出されてしまった。なんなんだ本当。でも確かにドクターは俺1人を見ているわけではないので、仕方なく自室に戻る。もう少し喋っていたかったな、と尾を引かれつつも、1人で広いカルデアの廊下を歩いた。
「いいことじゃないか、名前くんに気の置けない友達が増えたって事でさ」
「うるさい〜」
「ロマン、君ね、マジでガキみたいだぜ?」
「うるさい〜」
「はぁ〜だめだこりゃ」
「失礼します、ドクター………。ええと、ダウィンチちゃん、これはどういう状況でしょう…」
「そっとしておいておやりマシュ。それか少しキツめに背中でも叩いてやって」
「え、えええ!?」
「ゔゔ〜…」