素材倉庫で個数管理をしていると、ぐいっと誰かに襟元を引っ張られた。ぐえ、と悲鳴をあげて何事かと振り返ると、金髪のグッドルッキングガイが腕組みをして立っていた。上から下まで俺の事を値踏みするように無言で見ている。なんだ?緊張で動けず、薄い電子機器を抱きしめながら硬直していれば、数秒の沈黙の後、彼は「よし」と言った。
「ビジュアルは合格だ。特に顔がいい。自分の役割をこなしたら誰かが止めに入るまで人の分までやり出して結果過労ラインに到達するような顔をしておるわ」
何かに合格してしまった。俺を見た目だけで分析してきたのは、確か最近召喚に応じてくれたキャスターのギルガメッシュだ。
俺が未だ動けずにいると、ギルガメッシュは少し苛立ったような顔をした。
「貴様、王が声をかけているのだ。何か言ったらどうだ」
「は、はい!」
そう言われても、キャスターになっているからといって相手はギルガメッシュだ。迂闊なことを言えば、どうなるか分からない。
俺がオロオロとしていると、ギルガメッシュの後ろから、ぴょこりとケモミミが生えた。
「どうですか〜プレジデント〜。なかなかのイケメンでしょう〜?お仕事もできますしぃ、きっと超過労働とかにも対応してくれますよぅ?」
聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたが、ギルガメッシュと二人きりの状況が変わったので少し胸を撫で下ろす。ギルガメッシュは現れたケモミミの女性に驚くことも無く、俺の方を見ながら口を開いた。
「その点はいい。だがその物怖じした態度をどうにかしろ」
「仕方ないですよぅ、誰だって、会社の社長さんにいきなり声をかけられたら緊張しますぅ」
「いかなる時もそのような事態を想定した行動が取れるというのが側近というものだ。シドゥリめがいれば教育係にするのだがな。…まぁいい、貴様で決まりだ。行くぞ」
行くぞ、と言われましても…。スタスタと踵を返して出口へ向かってしまったギルガメッシュの背中を呆然と眺めていたら、真名を未だ明かさない褐色のキャスターが俺の肩に手を乗せてグイグイと前へ進ませてくる。柔らかい感触が背中に当たって、ちょっと、いやかなりドキドキする。
「はいはい、説明は後でしますから、ちょぉ〜っとお付き合いくださいね〜」
これは行かなきゃいけない感じだ。観念した俺は、褐色のキャスターに押されるまま、しぶしぶギルガメッシュの後を追った。
「まずは名を名乗れ雑種」
「あ、えっと、名字名前です」
「喜べ名前、貴様を今より臨時の側近とする」
「え゛」
何を言われるかと思えば、本当に何を言ってるんだこの王様。そんな表情がそのまま出てしまっているのだろう、ギルガメッシュは分かりやすく機嫌を悪くした。
「喜べと言っているのだが?」
「わぁーーーい!!!(やけくそ)」
「フン、まぁいい。早速だが仕事だ臨時。おい、アレを渡せ」
「はいはい〜」
ギルガメッシュにそう言われて、キャスターが俺にはい、と小ぶりな電子パッドを手渡した。受け取った俺は、画面を起動する。すると、カルデアの地図が出てきた。
「最初の仕事は我にここを案内することだ。漏れがないよう知っていることは全て話せよ。我からの質問には淀みなく答えろ」
「ぅ、ぇっと、はい!お、王様!」
「うむ。では行くぞ。キャスター、貴様はもうよい」
「はいはい〜!今後もどうかご贔屓にぃ」
振り返ったキャスターが、俺にコソコソと耳打ちをしてくる。ふわふわした横髪が頬に当たってくすぐったい。
「名前さん、しっかり頑張ってくださいね!私の今後の斡旋業のためにも!」
「ちょっと」
人を勝手に商品にしないで欲しい。だが文句を言おうとする前に、キャスターはではでは〜!と姿を消してしまった。
「は、いい精根の女だ」
ギルガメッシュはキャスターの方を見て笑った。その顔に見とれていたら、行くぞ、と一言言って先へ行ってしまった彼の背を追う。俺は緊張しつつも、賢王であるギルガメッシュの傍にいることを臨時といえど許されたことに、胸をときめかせながら後に続いた。