パーティゲームなんてやるのいつぶりだろう。それもテレビゲームの。
「次、名前氏の番ですぞ」
「あ、うん」
黒髭に手渡されたコントローラーを受け取る。体もデカいし手もデカいな。握ってるコントローラーが凄く小さく見える。
「名前くん!姫からはなんも取らないでね!?今姫凄いピンチなの分かるよね!?ね!?」
「コラコラおっきー、それを決めるのは名前氏であるからして。で、どうする?やっちゃう?やっちゃった方がいいと思うな〜くろひーは〜」
「ちょおお!やめて!やめてよぉ!」
決めるのは俺なんでしょ…とツッコミながらサイコロを振るボタンを押すと、どうやらミニゲームのマスだったようで画面が賑やかに切り替わり自動でチーム分けがされていく。自分の選んだキャラがてこてこと可愛らしく歩き、マンドリカルドの選んだキャラの横に並んだ。
「あ、オレとみたいっすね。よろしくっす」
隣でラフにパーカーを着たマンドリカルドが現実世界でぺこっと頭を下げた。こうしていると学生時代の同級生みたいに見える。
反対隣りでは俺たちをテレビゲームに誘い込んだ黒髭と刑部姫が「よーしくろひー!盾になれ!」「いやチームだから」と盛り上がっている。みんなが背もたれにしているソファには、魔人…さん?沖田くんのオルタちゃんがボリボリとお菓子を食べながらゲーム画面を鑑賞していた。
「このお菓子、最初は微妙だと思っていたが手が止まらなくなってしまった。何かヤバいものでも入っているのだろうか…ヤバみ…(ボリボリ)」
ビールのおつまみみたいな、辛そうな菓子を真剣に吟味している。多分山椒じゃないかな…。
ゲーム画面ではミニキャラがテニスラケットを持ってコートに並び始めた。やたらとキャラが喋るなこのゲーム。
「あー…名前はこれ、やったことは?」
「ないな。あの2人は経験者っぽいし、不利だなこれ」
作戦を立てているのか、それとも仲間割れしてるのか黒髭と刑部姫はわーぎゃーと賑やかだ。マンドリカルドはバツが悪そうな顔で頭をかいて、何も悪くないのに「すんません」と謝ってくる。
「テニスかぁ、現実でもやったことないな」
「俺も…なんか、俺なんかがやるようなスポーツでもねぇし…」
うーん、マンドリカルド、自分で言うほど暗すぎる性格でもないし、何が悪いわけでも無いはずなんだけど…。
「とりあえず頑張ろ、ゲームなんだしさ、勝とうぜ」
「っすね」
安心させるように笑って言えば、はにかむように照れ笑いで応えてくれた。そうそう、そういう所が君の良い所だと思うよ名字くんは。
「くらえ!くろひーブロック!」
「ぬぁ!?打ち合わせに無いこと言うんじゃねー!」
「っし!スマッシュ決まった!」
微妙に息が合わないコンビのおかげで、手探りでゲームをしてる俺らでも割と互角の闘いが出来ていた。グッとガッツポーズをしているマンドリカルドを横目に見る。熱中し出すとスイッチが入るタイプらしい。
「来いよ名前くん!どんなボールでも捌いてやんぜ!」
「んー………黒髭、これ、コツとかあったり…」
「へっ!敵に教えるわけねぇだろうがよ!」
「今度のジャンヌの新刊取り置き頼んどくよ」
「トスしたボールが頂点のタイミングで打てばおk」
「くろひーーーー!!!!!」
勝てた。
「あー!楽しかった!」
まだまだゲーム大会を続けるという2人に誘われたけど、俺としては久々のテレビゲームに2時間近く集中しただけでヘトヘトだった。それでもいい気分転換になったし、新鮮な体験だったのでいい気持ちだ。隣を見ると同じタイミングで部屋を出たマンドリカルドも俺と似たようなポーズで伸びをしている。目が合ってお互い笑ってしまった。
「たまにはいいもんすね。勝てたし」
「そうそう、勝てたし」
結局あの後、仲間割れした黒髭と刑部姫の足の引っ張り合いでマンドリカルドがいつの間にか1位になり、その流れで俺が2位という感じで、後ろでずっと見ていた沖田くんオルタが「うん、まぁ、そうなるな」と2袋目のおせんべいを開けながら頷いていた。よく食べる子だ。今頃は部屋で彼女も参加して、別のゲームをやり始めてる頃だろう。
気が抜けたら、なんだかお腹がすいてきた。そういえばさっきからマンドリカルドが静かだ。チラッと様子をうかがうと、こっちを見ていたのか再び目が合う。今度は慌てた様子で目をそらされたけど。
「よかったら食堂になんか食べに行かないか?お腹すいちゃってさ」
「え、あ、…俺と?」
他に誰が?というか、もしかして嫌だったか。というか馴れ馴れしすぎた?内心焦りだしていると、「あーっ、いや!ちがくて!ちがくてっすね!」とすぐにマンドリカルドがあわあわと手を振りだす。
「その、俺でよければ、ってことで」
「え、いや、こちらこそ…」
「いやいや、こちらこそ…」
「いやいやいや、こちらこそ…」
「いやいやいやいや…」
「ふっ…仲良きことはなんとやら…。しかし見たまえ、あの2人が首を左右に振るたびに乱れる前髪…ハッ!?今!見たかねマスター!?今だった!今だったぞ!今!歴史が!変わった!」
「落ち着け、落ち着きなさいバーソロミュー」