18
庭のミモザが咲いた。まだまだ肌寒い風に揺られながら、重たそうに枝が揺れていた。
陽射しの暖かな縁側で座ってぼーっとそれ眺めていたら、いつの間にかジュナオたちが集まってきていて、白ジュナオは膝の上に頭を乗せ寝てしまい、灰ジュナオは庭に出て最近ハマりだしたスマホカメラでパシャパシャ風景を撮っていて、ジュナオは俺の横で同じ様に座って目を閉じ日光浴をしていた。白ジュナオのわた毛みたいな髪の毛を触る。ふわふわだ。
ジュナオたちの夢を見てから、大体ひと月くらい経った。あれから何か大きな変化があったかと言われれば特になく、今まで通り、穏やかな時間が過ぎている。いや、最近ますます距離が近くなったという気はするが。物理的な意味で。
あの夢は、しばらく見ていない。列車の中のアルジュナに会えないのは寂しいが、こちらがどうこうできることではないので、大人しく待つしかないのだろうけど。
撮りたいものが撮れて満足したのか、灰ジュナオがぱたぱた駆けてくる。表情もどことなく満足気である。
「何撮ったんだ」
「花。空」
「どれどれ」
スマホを受け取り見てみる。ミモザを手前にして、バックに昼間の月が写った綺麗な写真だ。アングルがいい、色合いも綺麗だった。
「壁紙にしていい?」
こくりと頷いて、灰ジュナオも縁側に座った。ジュナオと同じ様に陽射しの下で目を閉じる。並んでいるとそういう置物みたいだな。
ふいに手の甲をべしっと叩かれた。なんだと下を見ると、白ジュナオが半目で起きている。こいつまた尻尾で叩いたな…。
「撫でる」
「君ね」
どうやら頭を触る手を休めたのがお気に召さなかったらしい。はいはいと返事をして再び手を動かすと、満足そうに目を閉じた。
風は冷たいが、陽射しは暖かいので気持ちがいい。一定のリズムで白ジュナオの頭を撫でているうちに、俺も次第に瞼が落ちそうになってきた。
ふぁ、とあくびをして、横になる。白ジュナオには悪いがちょっと限界。そっと頭を膝から下ろし、日向に沿って横になった。
そのまま心地いい風に吹かれて眠ってしまいそうだったが、もぞもぞと周りで動き出した気配を感じた。胸の辺りで1人、背中の辺りで1人、足の辺りで1人。ピッタリくっついて横になったようだ。
きっとこの光景を傍から見たら面白いことになっているんだろうな。誰かに撮ってもらいたいものだ。
まどろみの中で、3人が何かこしょこしょと話しているのが聴こえてきた。ふふ、というジュナオの笑い声がする。何を話しているんだろう。
暖かい。ミモザの優しい香りに包まれて、俺は意識を手放した。

陽射しが陰ってきたので、みんなで浮かんでマスターをリビングのソファまで運ぶ。枕を敷いて毛布をかけると、マスターは気づくことなく穏やかに眠り続けていた。
「よく寝ていますね」
「マスターは、よく寝る」
「寝すぎ」
「いや、貴方は人の事を言えないでしょう…」
3人でソファの縁からマスターの寝顔を見下ろす。するとふいに、マスターが目を閉じたままふにゃ、っと笑った。
「ふふ、…ジュ…ナ、」
3人で顔を見合わす。どうやら、私たちの夢をみて微笑んでいるらしい。
顔に近づき、頬に触れた。前髪をかき分け、そっと口付けをする。
「おやすみなさい、マスター」
貴方がもう、悲しい夢を見ないように。その瞳に、涙を浮かべないように。
そっと、ぎゅっと、手を握った。