イメソンリクエストのお話でした。
オー!リバル!/ポルノグラフィティ
カルナに用事があったので立香君に居場所を訪ねると、彼はどうやら戦闘シミュレーションルームに居るらしい。今はきっと白熱してるから、様子を見ながらでも待ってた方がいいですよと言われたので、隣に座った立香君にならって座り、パソコンの画面をつけた。
「フッ…!」
細く白い腕が横に一閃動いた。刃の軌跡が糸のように伸びて光ったかと思うと、空間が裂けるように地面ごとカルナの前方の景色が抉れた。訳が分からず立香君の方を見れば、「(大丈夫!俺にもよく分かりません!)」と目で語られた。
「はぁっ!」
対するアルジュナの方は、身を翻しカルナの斬撃を上へ避けて回避していた。飛んでいる動作中にも関わらず弓を構えて次の攻撃に移ろうとしている。それを見たカルナは片目を抑え下を向いたと思うと、勢いよく顔を上げて赤い光線をアルジュナに向かって放った。
今目から出たよ?またまた立香君の方を見れば、「(はい、目から出ましたよ)」と心の声が聞こえてきて、静かに頷かれた。喋ってくれない?
直撃かと思ったが、アルジュナは瞬時に狙いを足元に変えた。そのまま攻撃の反動で射線をズラしカルナのビームを回避。クルクルと反転しながら、三本構えた弓矢をカルナにピタリと狙いを定めて放った。
「今のバーフバリで見たよ?!」
思わず叫んだら立香君が噴き出していたけど、俺はモニターに釘付けだ。カルナは自身の体よりも大きな槍を持ちながら身軽に追撃ミサイルのような軌道を描いて迫るアルジュナの矢を全て避けた。地面に着地したアルジュナとカルナは、そのまま距離を保ち睨み合う。鏡合わせのように向かい合う白と黒の兄弟は、ジリジリと穏やかな歩みで近づいていった。
「………」
「………」
どちらも無言だが、飛び散る火花が見えるような気がするくらい熱気を感じる。今のところ勝負はやはり互角なのだろう、どちらかが追い詰められているという風でもない。
「あ、これ止めないとまずいな」
立香君がそう言ってシミュレーションルームの入口の方に駆けて行った。え?嘘でしょあの気迫の2人に声掛けに言ったの?ヤバいって死んじゃうって!焦った俺は思わず彼の背を追ってシミュレーションルームに入ってしまった。
「神々の王の慈悲を知れ。絶滅とは…」
「神聖領域拡大、空間固定、神罰執行期限設定…」
「ストーップ!ダメダメダメ!!」
何が始まるんですか!?というくらいの空間のヒリつきを立香君は勇敢にも一声で止めに入った。2人はハッ!とした表情で、それでもどこかモヤモヤとした様子を見せながら立香君の方へ歩いて来る。
「こら!前に宝具連発して壊しかけたからしばらく宝具禁止って話だったでしょ!もうおしまい!」
「む、すまん、白熱して抜けていた」
「申し訳ございません…」
さっきまでの気迫が嘘のように2人はしおしおと頭を下げた。立香君、凄いな…と口を開けて見ていると、俺に気がついたカルナがやって来た。
「どうした名前。マスターはいいがお前はここへ来るべきではない」
職員なんぞがこの場にいるのが好ましくない、という意味だろうか。確かに、立香君のように令呪もない俺なんかが彼らの間に立つ権利などないだろう。すみませんでした…と身を小さくしてすごすご戻ろうとしたら、「名前さん、」と呼び止められた。
「違いますよ、恐らくこの男は"身を守るすべがないから危ないので、入るべきではない"と言いたいんです」
真面目な顔でアルジュナがカルナの意志を翻訳してくれた。
「そうなんだろう、カルナ」
「そう言ったつもりだったんだが…」
がくっ、とカルナが項垂れた。立香君はあははと笑うとそんなカルナの肩をぽんと叩く。
「名前さんは俺がちゃんと守るよ」
「…むう、…」
なんかすごく恥ずかしいことを言われた気がする。居心地悪く目を泳がせていると、アルジュナが俺の背中に手をやり、優しく出口まで誘導してくれた。
「お騒がせ致しました。さぁ、出るとしましょう」
「あの弓矢を三本同時に撃つやつ、スゲーかっこよかった」
「見ていらしたんですか?ありがとうございます」
そう言ってニコッと微笑まれる。うーんこれが授かりの英雄スマイル。
「勝負はもういい?」
「今日は良しとしましょう。マスターの手を煩わせてしまいましたし。貴様もいいだろう、カルナ。…カルナ?」
不思議そうに聞き返すアルジュナにどうしたのかと振り向けば、何故かムッとした表情でこちらを見ているカルナと立香君が並んでいた。そんなポイントあったか?訳が分からず俺とアルジュナは顔を見合わせ、互いに思い当たるところがなかったので首を傾げた。
「カルナ、なんだその顔は。あの、マスターまで、どうされましたか?」
「………いや」
カルナは不服そうに口を閉ざした。一方立香君はむーっと口を尖らせてアルジュナににじり寄る。
「アルジュナ…」
「は、はい」
「ずるいぞ、そういうのは」
「え?ええと、は、はい。すみません…?」
きょとんとしているアルジュナの脇をつんつんしながら2人はシミュレーションルームを出ていった。
「名前」
気づくとカルナが横に立っていた。さっきまで地面を抉って目からビームを出していた人とは思えない線の細さに、どうなってんだと固まっていると、ぺこっと頭を下げられた。
「すまない」
「えっ?あっ、いやいいから、大丈夫だよ。気にしてない」
「そうか…」
見るからにしゅんとさせてしまった。どうしようかと右往左往して、あっ、とここに来た本来の目的を思い出した。
「カルナ!」
「なんだ」
顔を上げたカルナにポケットに入れていた紙を握らせた。
「…?」
「よかったら、貰ってくれないかな」
渡したのは先日ダウィンチちゃんから貰った、レイシフト観光チケットだ。なんでも娯楽の少ないカルデアのために、特別にダウィンチちゃんが考案したらしい。1日だけ好きな観光地を見て回ることが許されるとか。なんで俺に渡すんだと聞けば、
「ふふ、君ってばレイシフトできるだろう?でもほら、1人でって訳には行かないしね。ここにそのチケットが2枚ある。さぁ!君はどの英霊とデー…観光に行くのかな?もちろん、私でもいいよ〜」
とのことである。なんか願望を言いかけてたけど、断るにはちょっと惜しい話だったのでまんまと受け取ってしまった。
カルナにあらかた説明すると、目を大きく見開いて俺を見た。
「俺か」
「うん、お世話になってるし。主にドクターが」
「俺でいいのか」
「むしろ、一緒に行くのが俺っていうのが申し訳ないんだけど…」
そう言うと、カルナは真剣な表情で首を横に振った。
「そんなことはない。…受け取ろう。だが、」
カルナが言い淀む。しばらく考えて、ゆっくり口を開いた。
「アルジュナと俺は正反対だ。俺では、あのようにお前を安堵させてやることができない」
「え?カルナとアルジュナ、結構似てると思うんだけど…」
うーん、と考えて、思ったことを伝えてみることにした。
「よく分からないけど、俺はカルナといると安心するよ」
「…そうか」
どうやら大丈夫のようだ。カルナなら断らないだろうと思って頼んだのだから、我ながら嫌な奴だなとは思いつつ、大事そうにチケットを握るカルナを見て安堵した。
「さっきなんであんなむくれてたんだ?なんかあった?」
今なら大丈夫だろうと聞くと、珍しく柔らかい表情でカルナが ふ、と笑った。
「問題ない。たった今、解決した」