クリスマス
クリスマスの飾りがわんさか入った段ボールを抱え、よっこいしょと腰を上げた。日付は変わり、今年のクリスマスも無事面白可笑しく収束したみたいだ。昨日までの浮ついたカルデアベースの廊下は既に簡素な景色に戻り、行き交う影も、若干の高揚を残しながらいつもの景色に変わっていく。
子供の姿をした英霊達がお手製で作ってくれたクリスマス飾りは今年も捨てられそうにない。胸に抱えた昨日の思い出たちを見つめていると、まだどこかに残っていたのだろう、誰かがハートの形のオーナメントをそっと箱に入れるのが見えた。
「立香くん」
「メリークリスマスです。……終わっちゃいましたけど」
あは、と眉を下げて笑う姿を見て「君は今年も忙しそうだったな」と声をかけた。あちこちでもみくちゃにされてきたんだろう、服が紙吹雪やら生クリームやらでめちゃめちゃだ。
「片付けありがとうございます。俺、手伝える物ないですか?」
「無いよ。主役はもう寝なさい」
あまり長話をしていると、とても自然な流れで荷物を取られてしまうようなビジョンが見えるのだ。なんというかそういう事をする子なのだこの子は。
今度こそ荷物を持って歩き出す。追いかけて来る気配は無い。それを少し寂しく感じながら扉の前まで来た時に、不意に後ろから、足音が駆け足でやって来た。
「メリークリスマスです、名前さん。おやすみなさい」
段ボールの中に、また、何かが放り込まれる。立香くんはぺこっとお辞儀をすると、そのまま早足でその場からいなくなってしまった。
「………」
段ボールの中には、色とりどりの飾りの中にひとつ、真っ白な箱に真っ赤なリボンがついた、小さなクリスマスプレゼントの箱が入っている。
「……ぅぅ」
なんというか、そういう事をする子なのだ、この子は。
「メリークリスマスです!名前さん!えい!」
「へ?」
赤くなって固まっているところに、そんな元気なマシュの号令と、またもや何かが段ボールの中に放り込まれた。目を白黒させてマシュの方を見ると、マシュも「それでは!」と元気に笑って立香くんの逃げた同じ方角へと行ってしまう。
「え、ま、マシュもくれるの…?」
「私からもあげるよ〜」
今度は後ろから、そして下から声がする。背伸びをするように華奢な少女の腕が伸びてきて、またひとつ段ボールの中に荷物が増えた。
にひひ、と笑ってダヴィンチちゃんが颯爽とローラースケートで声をかける間もなく去っていく。俺は何が起きているのか分からず右往左往していると、それを皮切りにまた一人、また一人と通り過ぎざま、「それじゃあ私も」と何かを入れてくる。なんだこの状況、どうなってるんだ?誰だ今ジャガイモ入れた奴。
「ちょ、ちょっとまっ」
「重そうですね。持ちますよ」
「え、あっ!」
混乱しているうちに、ひょいっと誰かに段ボールを取られてしまった。声をかけようとすると、その相手は段ボールをよけて、さっきも見たにこにこ顔を俺に見せた。
「……立香くん」
「あはは」
いつの間に戻ってきたのか。というか、もしかしてコレ、嵌められたのではないだろうか。横にいるマシュも、立香くんと同じように笑っているし。
「お疲れ様です、名前さん」
「だから…疲れてるのは君らだろ。返してってば…」
段ボールを渡すように手を出すと、そこに差し出されたのは先程みんなが各々入れていったプレゼントの入った紙袋だった。…しっかりジャガイモも入っている。
「俺たちがケーキ食べてる間も、ずっと管制室にいましたよね」
「『あの職員、全然休まないではないか!馬鹿なのかね!』…と、ゴルドルフ所長も怒っていらっしゃいます。ですので、名前さんには、クリスマスの後片付け禁止令が発令されています!速やかに休息するように!…と、ゴルドルフ所長からです!」
ピシッ!と、あまり似ない所長のモノマネを挟み、マシュが言う。……そういう事か。しかし、このプレゼントはなんなのだろう。
「知らないんですか?」
紙袋を不思議そうに見る俺に、立香くんが内緒話をするように囁いた。小さな秘密を打ち明けるように、イタズラが上手くいった時の子供のような顔で、そっと。
「いい子にはね、サンタさんが、プレゼントをくれるんですよ、名前さん?」