やりたいこと
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地元高校志望していたはずの永和が
最近嫌いな勉強をし始めている。
それだけで大きな変化ともいえて
その理由をまだ聞かされていない爆豪は
イライラしながら彼女の事を睨み付ける。
「……勝己、目線が痛い。」
「イタいってなんだこの糞野郎!」
「痛いの意味違うし 暴言酷い。」
BOM!と大きな爆発音を立てて
永和の部屋が煙たくなり 窓を開けた。
そしてまた椅子に座るなり
苦手な英語を綴って集中する。
「お前、高校何処受ける気だよ。
地元なら勉強しなくても受かるだろ。」
「地元はやめた。」
「はあ?」
「なりたいもの、出来た。」
「はあ〜?」
何を言ってんだこいつは。
と言うような表情で永和を見るが
頭の良い爆豪だ。すぐに勘付いて
まさかとさらに目線が強くなり
ギロリと睨み付けている。
「何になんだよ。言ってみろよ。」
「……ヒーロー…」
BOOOOM!!!!
彼の怒りは頂点に達したらしく
この間の緑谷のノートの様に
永和の英語のノートまで爆破して焦がした。
プスプスと焦げたノートを
あーあ…と言った感じで永和は眺めた。
「此間の敵(ヴィラン)
自分なら倒せると思ったからか?
それとも俺を守る為とかそう言いてえのか?
どっちだ!ああ!!?(怒)」
こんなにキレる爆豪は久々だ。
確かにこの間の流動系の敵(ヴィラン)は
触らなくても永和なら鎮圧出来た。
酸素濃度を下げて窒息させてば良いのだ。
もがいて爆破していた二次被害も
それによって無くなる。
あの時永和がヒーローになれたのだ。
それが爆豪にとって気に食わない。
でも永和がヒーローになりたくなったのは
そういう意味なんかじゃなくて
もっと先を見据えた事だった。
「あたしは勝己を助けたいんじゃない。
今まであたしはヒーローは沢山いるから
助けてくれる人は沢山いると思ってた。
でも、あの時いたヒーローは助けてくれなかった。
勝己だから耐えきれたけど、
他の人ならもっと被害があったかも。
出来る事、出来ない事がヒーローにもある。
あたしが他の人よりも出来る事が多い個性なら
助けたいなって思ったの。
だからそれがヒーローになりたい理由。」
「……チッ、」
「でも、まだ親には言ってない…
一番に助けてあげたいのは家族だもん。
ヒーローになったら側に居られなくなりそうで
それが嫌だったから地元志望だったわけだし…」
「言えばいいだろ。」
「うわあ…簡単にいうなあ…」
「なんだよ!」
「だって悲しませたく無いもん。」
永和の純粋な思いに爆豪は少し落ち着く。
彼女の自宅に出入りする事が多いから
その家族の絆は重々理解している。
でも永和がやりたい事出来たのに
そのチャンスも与えられないのは
爆豪自身もイライラする種だ。
「……ちょっと来い。」
「え、」
「親父さんもいんだろ。」
「いるけど…え、何言うの?」
「うじうじしてんのがイラつくだけだ。」
爆豪がそういうと永和の腕を引っ張り
一階へとドタドタ階段を降り行き
永和も転げ落ちない様に気をつけながら
彼の後をついて行ってリビングに来た。
「おじさんおばさん。」
「勝己くん?どうしたの?
ジュースのお代わり?」
「ちげえ。こいつが話しある。」
「!」
「そうなの?」
「う、うん…」
「おじさんは?」
「書斎で仕事中だけど呼んでくるわね。」
「い、いいの?」
「大事な話なんでしょ?」
永和の母親はすぐに状況を理解したらしく
奥の書斎にいた父親も呼び出して
リビングのダイニングテーブルで
4人は腰掛けて両親と永和勝己で向き合った。
「話って何?永和。」
「………その、進路について」
「うん。」
「あたし、雄英のヒーロー科に行きたい。」
永和がそういうと2人は驚く様子もなく
お互い顔を見合わせてクスリと笑った。
「永和がそうしたいならそうしなさい。」
「で、でもあたし居ないとお父さん大変じゃ…」
「確かに永和がいないと面倒だけど
お医者さんには見てもらってるし、
医療器具も揃ってる。母さんが空気をいつも
綺麗にしてくれてるし問題無いよ。」
「ほんと?」
「なんだ、そういう心配か。」
「お父さんに気を使わせないの。」
「永和。父さん本当は
ヒーローになりたかったんだよ。」
「え…」
「でもそれは叶わなかった。
だから実は永和が叶えてくれたら、
そう願って名前を付けた。」
「永遠の平和を願って永和。
貴方が平和を守ってくれたらと
お父さんとお母さんは願っているわ。」
初めて聞かされた事に
永和は涙腺が緩んだが、
泣くもんかとぐっと耐えて
ちらりと爆豪を見ると
ぶっきらぼうな無表情で
特に驚きも感動も無かった。
「……良かったな、なんて言わねえぞ糞が!」
「えぇ、折角の感動シーン…」
「どこが感動シーンだ!
てめえが平和の象徴にさせるか!
No.1ヒーローは俺がなるんだよ!」
「勝己くんならなれるわよ。
私たちも勿論応援しているし
勝己が居るなら私達も安心だわ。」
「永和を宜しく頼むよ。」
「………ス。」
「え、何その結婚の挨拶みたいなの。」
「誰が結婚するか!」
「えー違うの?勝己くん。
最初そうなのかと思ってたのにー」
「てっきり娘さんを下さいなくだりかと
思ってこっちはヒヤヒヤしてたのにー」
「違えわ!」
さすが永和の両親。
彼女に負けないほどのマイペースさで
爆豪はいつも揶揄われたり
振り回されたりで和やかな家庭だった。
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