後悔









当時副隊長の海燕には妻がいた。


妻も死神で、席官は四席。
夫の副隊長と妻の四席に挟まれた三席の私は
よく娘のように可愛がられていた。


然し、ある日妻の都は虚にやられ死んだ。



そして海燕と浮竹隊長と私とルキアは虚を始末しに向かった。

虚は大きく自我があり、言葉を話す。



『海燕殿、まずは私が出て様子を…』

『隊長。俺 一人で 行かせて下さい』








       浮竹隊長はどう思ったかわからない。

         私とルキアは後悔していた。

        何故、その時拒まなかったのか
        何故、その時止めなかったのか









『…ああ』



海燕は一人虚と向かい合った。

虚に説いてもそんな事は無意味だ。
海燕は虚の足を斬りつけ触覚に触れた。



『水天逆巻け"捩花"!!』



始解したはずだったが、海燕の刀は消滅した。



『一夜毎に一度だけの能力だ。
その夜最初に儂の触腕に触れた者は
斬魄刀が消滅する!!!』

『海燕殿!!』



ルキアは飛び出そうとしたが、浮竹は止めた。



『!、隊長…!?
お…お放し下さい!海燕殿…
海燕殿を助けなければ!!(汗』

『海燕を助けて…
それで奴の誇りはどうなる?
お前が今力を貸せば奴の命は救われるだろう
だが、それは同時に
奴の誇りを永遠に殺すことになる』

『誇りが何だと言うのですか!!
命に比べれば誇りなど!!』

『…いいか。よく覚えておけ
戦いには二つあり、
我々は戦いの中に身を置く限り
常にそれを見極め続けなければならない

命を守るための戦いと

誇りを…守るための戦いと…!

今…奴は誇りの為に戦っている。
妻の誇り。部下達の誇り。
そして何より奴自身の誇りのために。
…つまらん意地と思ってくれて構わん…
奴を…このまま戦わせてやってくれ…』



海燕は素手で戦っていた。
そして虚の触腕が海燕を襲い
虚は殻だけになったように崩れた。



『…何じゃ 儂を呼んだか。小娘』

『…か…海燕…殿…』



虚は海燕の身体を乗っ取ってしまった。
これはあまりにも残酷な事だった。



飛び出した虚を浮竹隊長が止める。



『…隊長ーーー…!(汗)』

『…逃げろ 朽木』

『…え…?』

『早くしろ!!死にたいのかっ!!!』



ルキアは浮竹に命令されその場を離れた。



『紬!朽木を頼む!』

『…嫌』

『紬!』

『………連れ戻して来ます。』



紬もルキアの後を追った。


私は、後悔した。


あの時の後悔を抱えてまた重ねていくのかと、



『…ルキア!!』

『紬殿…!!』

『逃げちゃ駄目!!
海燕副隊長を助けなきゃ!!
最後を見届けなきゃ後悔する!!』



私が叫んだ事によってルキアは戻った。

戻った時には浮竹隊長が血を流していて
海燕の姿をした虚が向かってきた。



『殺せ!!!
そいつはもう…海燕じゃないんだ!!!』



私が先に刀を向けたが、浮竹隊長の叫びによって
ルキアが虚に刀を刺した。






             心臓に








『……………隊長…
…ありがとうございました……
…俺を…戦わせてくれて…』

『…ああ』

『…朝霧……、
結局俺の手でお前の笑顔……
取り戻せなかった…すまねえな………

でも忘れんなよ……
お前はあいつらしか見えてなくても……
俺と都は……お前が娘みたいに愛おしかった………』

『副隊長……』

『…朽木………
俺の我儘に付き合わせて…
ヒデー目に遭わせちまったな…
悪い。キツかったろ。
ありがとうな。お陰で、
心は 此処に置いて行ける…』



海燕は死んだ。


そして浮竹隊長の推薦で私は副隊長に昇格した。
隊長格になるつもりはなかったが
十三番隊の副隊長は譲りたくなかった。

これが志波家からの憎しみと十三番隊の罪。













ーーーーーー…*°



隊舎に戻ると浮竹隊長と虎徹と小椿三人揃っていた。



「朝霧…」

「隊長…、ルキアちゃんの処刑時刻が…」

「ああ。俺はこれから中央四十六室へ進言してくる。
通るか分からないがな…」

「私も行きます。」

「ああ。」



紬と浮竹は中央四十六室に向かった。
そしてルキアの処刑準備は着々と進められていた。

外の霊圧を感知していたルキアは
霊圧が乱れて弱くなり消える感覚を感じていた。
その中には朽木との戦いで倒れた阿散井も含まれる。
外の様子が分からないから祈る事しか出来ない。

そんな中、あの男が現れた。



「おはよ。ご機嫌いかがルキアちゃん」

「ーー市丸…ギン…!(汗)」

「あかんなァ。
相変わらず口悪いんやねぇキミは。
ギンやのうて




いつまでもそれやったら叱られるで、お兄様に」

「ーーー…(汗)
…失礼しました…市丸……隊長…」

「あ。いややなぁ。本気にした?
せえへんよ。告げ口なんか。
気にせんといて。僕と君の仲やないの。」

「…何故…何故市丸隊長が…
このような処においでなのですか…?」

「あァ。
なんや大した用事やないんやけど
散歩がてら…ちょっと意地悪しに」





        ルキアはこの男が嫌いだった。

        素性を直感で知ってしまっていた。


          昔も今も嫌いだった。

           気味の悪い男







「どないしたん?
急に えらいぼーっとして」

「…いえ…」

「あァ。そうや。
死んでへんみたいやねぇ。阿散井くん」

「…な…まさか……!」



ルキアは塀にしがみ付き霊圧を感じ取る。
だが弱々しく微かにだった。

このままでは……



「死ぬやろね」



市丸は残酷に言い放った。
それはルキアも分かることだった。



「怖い?」

「…なん…だと…?」

「死なせたないやろ。阿散井くんも他の皆も。
死なせたない人おると急に死ぬん怖なるやろ?」

「………!(汗)」

「助けたろか?」

Σ「…な…!?(汗)」

「い…市丸隊長…!?」

「突然何をおっしゃいます!!」



見張りでいた隊士も動揺する。



「どうや?
僕がその気になったら、
今すぐにでも助け出せるで。
君も 阿散井くんも それ以外も」



あり得ない言葉にルキアは困惑した。
本当に、本当にこの男が出してくれたら…と
先程まで不気味で嫌いで仕方がなかった男にさえ
自分は縋りたくなるほど余裕などなかった。

揺らぎ始めた瞬間、それはいとも簡単に



「嘘」



崩されてしまう。



ルキアは膝をつき叫んだ。
少しでも希望を持った自分が愚かだった。
市丸はにやりと口角を上げ、出ていってしまった。