暮らそう










ペンギンが下を向いて声を押し殺して泣いていると、
ベッドに寝ていたシャチも泣きながら起き上がり、
ペンギンの横に座った。



「あんたたちが助けてくれなかったら、
俺たちはあのまま死んでた。
助けてくれて、ありがとう!それと……」



シャチは気まずそうな様子でベポを見た。
そうして、何かを決意したように、口を開いた。



「白クマ……お前、俺たちが動けない間、
ずっと世話してくれてたよな。
おかゆ食わしてくれたり、リハビリ手伝ってくれたり……
どれだけ、感謝の言葉を並べても足りねェッ!」

「い、いいよ、そんなの……怪我してるやつがいたら、
助けるの、当たり前じゃんか」

「当たり前なんかじゃ、ないっ!
俺は、おれたちは、お前をいじめた人間だ。
蹴ったり、殴ったりした。そんな奴らに
優しくできるなんて、当たり前のことじゃない!」



そう言って、シャチはベポに向かって頭を下げた。
ペンギンもそれに倣った。



「白クマ……いや、ベポ。助けてくれてありがとう。
それから、勝手な八つ当たりで、
ひどいことして、本当に悪がった!ごめんっ!!」 



沈黙がその場を覆った。
泣きながらギュッとベポにしがみついてるアメリだけ
ついていけてないような不安そうな顔をしていた。

ベポが気にしないでくれよと言っても、
ペンギンとシャチは頭を下げたまま涙を流している。

ーー生きてる意味が分からない。 
そうペンギンは言った。
きっと、シャチも同じ気持ちなんだろう。
クソッ なんでか分からない。
分からないけど、とんでもなく不愉快だ。
まるで、町を焼かれた時の、
俺の気持ちが代弁されているようでーー…



「なあ、お前ら」



自然に俺はペンギンとシャチに声をかけていた。



「行くとこねェんだよな。
親戚の家に戻るつもりもないんだろ」

「うん……あそこに戻るのだけは、絶対に嫌だ……」

「よし、じゃあお前ら、俺の子分になれ。
そうしたら、とりあえずはここに住まわせてやる」



それを言った途端、
二人の表情が晴れやかなものに変わった。
俺が冗談でこんなことを口にしてるわけじゃない
ってことくらいは、伝わったんだろう。



「だからここはワシの家じゃっつーのに!」



じいさんがガミガミと文句を言ってくるが、
そんなものは無視だ。



「ちなみに、このベポもすでに俺の子分になってる」

Σ「初めて聞いたよ!そうだったのかよ!アイアーイ!!」

「子分ってなに??」

「お前は俺より先居たから違え」

「じゃあローが私の子分だ!」

Σ「嫌だよ!!」



子分が何か分かってないアメリをほっとくと
シャチとペンギンが顔を見合わせる。
2人、同じタイミングでうなずき合う。
そして、俺たちの方を向いて、



「「ここに、置いてください!お願いします!!」」



声を合わせて、もう一度深く頭を下げた。
同時に、ヴォルフが大きくため息をつく。
またクソガキが増えるのかと、小さく愚痴をこぼす。



「えーい、ガキども!しょうがないから、
貴様ら5人まとめて、この家に置いてやる!
だが勘違いするなよ!
ワシはお前たちの保護者になる気はない!
家族や友達なんてのもまっぴらごめんじゃ!
あくまでワシらの関係はギブ&テイク!
お前たちは生きていくための場所が欲しい!
ワシは発明と生活のための労働力が欲しい!
等価交換ということじゃ!
怪我人の体調が戻り次第、全員町でも働いてもらう!
ワシの手伝いだけじゃなく、
きちんとした労働をしてもらう!それでいいなっ!?」



誰も反対するやつはいなかった。
誰も暗い顔をしていなかった。
ヴォルフだけがひとり、
恥ずかしい演説でもしてしまったかのように、
顔を真っ赤にしていた。

ーーおれは、コラさんが言っていた
W自由Wの意味を、あらためて考える。
俺もアメリもベポも、ペンギンもシャチも、
この世界でどうしようもない孤独を味わって、
それでも今、絶望を乗り越えてここにいる。

俺にはまだ、W自由Wっていうのが
どういうことなのか、よく分からない。
ただ、このヴォルフの家に、
居心地のよさを感じているのはたしかだ。

なんでだろう?

ギブ&テイクを信条としているじいさんなのに、
ヴォルフの言葉はおれたちを押し潰したりしてこない。
対等な人間として尊重されていると、そう感じられる。
だったら、ここでいいのかもしれない。
こいつらと一緒にここで暮らしていくうちに、
俺はコラさんの伝えたかった
W自由Wを見つけられるかもしれない。
根拠はないけど、確信がある。

6人での奇妙な共同生活の先に、
俺はきっと求めているものに巡り合える。
ああ、そう考えればこの世界もなかなか悪いもんじゃない。
やかましく騒いでいる5人を見ながら、
俺はひっそりと、口元をゆるませた。














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