色んな大人
▽
駐在のラットさんは私の事を覚えてくれていた。
ヴォルフが預かったから安心はしていたけど、
元気そうにしていて良かったと言われて
私は胸が熱くなってベポの後ろに隠れた。
それから私たちは自分がどんな仕事をしたいかを
ヴォルフに話し、それに合った場所を回ることになった。
私は洋服のソーイングスタッフ。
裏方の仕事のお手伝いだから表に出るのは
忙しい時だけらしく、私は安心した。
ローは町の診療所でベポは力を活かせる工事現場。
ペンギンはレストランのウェイターで
シャチは美容院の雑用。
全部にヴォルフは付き添ってくれて、
私たちが真っ当な連中であること、
仕事をする上で信用できる子どもだってことを、
丁寧に説明してくれた。
そのおかげで私たちは全員、
あっさりと雇われることが決まった。
こんなに物事が上手く進んでいいのかと
逆に心配になるくらいのスムーズさだった。
「俺、前から美容師の仕事って憧れてたんだよ!
技を盗んだらお前たちの髪も切ってやるぜ!」
「シャチは手先が器用だからな。向いてるんじゃないか。
ふう、おれもウェイターの仕事はやってみたかったが、
ちゃんと接客できるかは心配だ。
コックとかに怖そうな人がいないといいな……」
「工事現場の仕事……ドリルとかショベルカーとか
使わせてもらえんのかな!?
俺、そういう機械で何かするのいいなあって、
ずっと思ってたんだ……」
「私も編み物好きだったから
洋服作りに関われるの嬉しいなー!」
「うーん、でも失敗して怒られるのは
やっぱり怖いなあ……」
「安心しろ、ベポ。ぼろぼろで血塗れになったお前を、
俺が診療所でちゃんと治してやるよ」
「大怪我すること前提かよ!アイアーイ!」
「あはははは!」
私たちは行きの不安が嘘のように
浮かれてこれからをワクワクしていた。
ローも言葉にはしないけど
診療所のお手伝いなんて医者だったローにはぴったりで
凄く嬉しそうなのが伝わって私も嬉しかった。
でもヴォルフは歩き進むに連れて
段々と表情が深刻になっていくのを感じた。
「最後に寄らねばならん場所がある。行くぞ、ガキども」
そう言ってヴォルフは町の入り口とは全然
別の方向へ歩き出した。
「なんだよ、ヴォルフ。ネジとかコイルとか、
発明品に必要なものは買ったし、
もう帰るんじゃないのか?」
「日用品とか食材もちゃんと買ってあるぜ」
ペンギンとシャチが言葉をかけるけど、
ヴォルフは返事をせず、一直線に歩いていく。
「なあ、こっちの方向って……」
「うん……」
後ろから、ペンギンとシャチのか細い声が聴こえた。
明らかに2人は落ち着かない様子でそわそわしている。
しばらくしてヴォルフは足を止めた。
目の前にあるのは、お城とまでは言わないけど、
とても大きい豪華な家だった。
シャチとペンギンは顔が青ざめていて、
2度と会いたくないって言ったのにという言葉を聞いて
やっと2人が酷い目にあっていた叔父さんの家だと分かった。
「どういうことだよ、ヴォルフ!
なんでおれたちをこんなとこに連れてくんだよ!!」
今にも泣き出しそうな声でシャチが叫んだ。
「シャチ、ペンギン。
無理やりやらされていたこととは言え、
お前たちが悪事の片棒をかついでしまったことは事実じゃ。
放っておいたら、町の人間の中にもそれに気づく者は
出てくるだろう。そうしたら、
お前たちに対する信用だって崩れてしまう。
だからこそ、ケジメをつけておく必要があるんじゃよ」
「で、でも!俺、あの人たち……叔父さんと叔母さんと、
ちゃんと話す自信なんか、ねェよ……
さっきからずっと、足も震えて……」
シャチは涙をこらえるようにして、歯を食いしばっていた。
「だいじょうぶじゃ」
ヴォルフは、左右から抱きしめるようにして、
ペンギンとシャチの肩に手を置いた。
「お前たちは見ているだけでいい。
ここからはワシの仕事じゃ。『大人』の、仕事じゃ」
信じろ、とだけ言ってヴォルフは豪邸の門を開け、
玄関の扉を叩いた。
中からメイド服を着た女性が出てきて、
初めは主人を出すのを断られたけど、
シャチとペンギンの名前を出すと呼びに行ってくれた。
「おお〜う、本当にペンギンとシャチがいるじゃねェか!
なんだじいさん、あんたがわざわざこいつらを
連れ戻してくれたのかい?」
嫌な感じの声をした男はジャラジャラと
豪華な宝石を身につけていて派手だった。
まるで私が見慣れた貴族や王族みたいで
私は思わずベポの後ろに隠れて服を握り締める。
チラリとローを見るとローは凄く嫌そうな顔で
男の事を睨み付けていた。
「確認するが、あんたがシャチの叔父、
ということで間違いはないか」
「あー、そうとも。シャチとペンギンの保護者だよ。
いやいや、急にガキどもがいなくなるから、
こっちとしても困ってたんだ。
わざわざ連れてきてもらって、すまねェな」
そう言って、金色のスーツを着た男は
シャチとペンギンに近づこうとする。
けどそれを、ヴォルフが間に入るような形でさえぎった。
「んん〜?どうしたんだい 久しぶりの家族の対面だ。
ガキどもも、家を出ていろいろと不安だったろうから、
早く中に入れて安心させてやりたいんだがねえ」
「……あんたに、こいつらを引き渡すわけにはいかんな」
「あん? 何言ってるんだい、じいさん。
もうボケちまってるのか?ああ……、
そうかそうか!なんの見返りも期待せず、
ガキどもを連れてくるなんてことはないわなあ!
いくら払えばいい?50万ベリーか?100万ベリーか?
便利な『道具』を運んできてもらったんだ。
報酬ははずんでやるよ!」
「道具、じゃと……?」
ピリッとヴォルフの空気が変わって、
それは初めて感じる重たい空気だった。
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>駐在のラットさんは私の事を覚えてくれていた。
ヴォルフが預かったから安心はしていたけど、
元気そうにしていて良かったと言われて
私は胸が熱くなってベポの後ろに隠れた。
それから私たちは自分がどんな仕事をしたいかを
ヴォルフに話し、それに合った場所を回ることになった。
私は洋服のソーイングスタッフ。
裏方の仕事のお手伝いだから表に出るのは
忙しい時だけらしく、私は安心した。
ローは町の診療所でベポは力を活かせる工事現場。
ペンギンはレストランのウェイターで
シャチは美容院の雑用。
全部にヴォルフは付き添ってくれて、
私たちが真っ当な連中であること、
仕事をする上で信用できる子どもだってことを、
丁寧に説明してくれた。
そのおかげで私たちは全員、
あっさりと雇われることが決まった。
こんなに物事が上手く進んでいいのかと
逆に心配になるくらいのスムーズさだった。
「俺、前から美容師の仕事って憧れてたんだよ!
技を盗んだらお前たちの髪も切ってやるぜ!」
「シャチは手先が器用だからな。向いてるんじゃないか。
ふう、おれもウェイターの仕事はやってみたかったが、
ちゃんと接客できるかは心配だ。
コックとかに怖そうな人がいないといいな……」
「工事現場の仕事……ドリルとかショベルカーとか
使わせてもらえんのかな!?
俺、そういう機械で何かするのいいなあって、
ずっと思ってたんだ……」
「私も編み物好きだったから
洋服作りに関われるの嬉しいなー!」
「うーん、でも失敗して怒られるのは
やっぱり怖いなあ……」
「安心しろ、ベポ。ぼろぼろで血塗れになったお前を、
俺が診療所でちゃんと治してやるよ」
「大怪我すること前提かよ!アイアーイ!」
「あはははは!」
私たちは行きの不安が嘘のように
浮かれてこれからをワクワクしていた。
ローも言葉にはしないけど
診療所のお手伝いなんて医者だったローにはぴったりで
凄く嬉しそうなのが伝わって私も嬉しかった。
でもヴォルフは歩き進むに連れて
段々と表情が深刻になっていくのを感じた。
「最後に寄らねばならん場所がある。行くぞ、ガキども」
そう言ってヴォルフは町の入り口とは全然
別の方向へ歩き出した。
「なんだよ、ヴォルフ。ネジとかコイルとか、
発明品に必要なものは買ったし、
もう帰るんじゃないのか?」
「日用品とか食材もちゃんと買ってあるぜ」
ペンギンとシャチが言葉をかけるけど、
ヴォルフは返事をせず、一直線に歩いていく。
「なあ、こっちの方向って……」
「うん……」
後ろから、ペンギンとシャチのか細い声が聴こえた。
明らかに2人は落ち着かない様子でそわそわしている。
しばらくしてヴォルフは足を止めた。
目の前にあるのは、お城とまでは言わないけど、
とても大きい豪華な家だった。
シャチとペンギンは顔が青ざめていて、
2度と会いたくないって言ったのにという言葉を聞いて
やっと2人が酷い目にあっていた叔父さんの家だと分かった。
「どういうことだよ、ヴォルフ!
なんでおれたちをこんなとこに連れてくんだよ!!」
今にも泣き出しそうな声でシャチが叫んだ。
「シャチ、ペンギン。
無理やりやらされていたこととは言え、
お前たちが悪事の片棒をかついでしまったことは事実じゃ。
放っておいたら、町の人間の中にもそれに気づく者は
出てくるだろう。そうしたら、
お前たちに対する信用だって崩れてしまう。
だからこそ、ケジメをつけておく必要があるんじゃよ」
「で、でも!俺、あの人たち……叔父さんと叔母さんと、
ちゃんと話す自信なんか、ねェよ……
さっきからずっと、足も震えて……」
シャチは涙をこらえるようにして、歯を食いしばっていた。
「だいじょうぶじゃ」
ヴォルフは、左右から抱きしめるようにして、
ペンギンとシャチの肩に手を置いた。
「お前たちは見ているだけでいい。
ここからはワシの仕事じゃ。『大人』の、仕事じゃ」
信じろ、とだけ言ってヴォルフは豪邸の門を開け、
玄関の扉を叩いた。
中からメイド服を着た女性が出てきて、
初めは主人を出すのを断られたけど、
シャチとペンギンの名前を出すと呼びに行ってくれた。
「おお〜う、本当にペンギンとシャチがいるじゃねェか!
なんだじいさん、あんたがわざわざこいつらを
連れ戻してくれたのかい?」
嫌な感じの声をした男はジャラジャラと
豪華な宝石を身につけていて派手だった。
まるで私が見慣れた貴族や王族みたいで
私は思わずベポの後ろに隠れて服を握り締める。
チラリとローを見るとローは凄く嫌そうな顔で
男の事を睨み付けていた。
「確認するが、あんたがシャチの叔父、
ということで間違いはないか」
「あー、そうとも。シャチとペンギンの保護者だよ。
いやいや、急にガキどもがいなくなるから、
こっちとしても困ってたんだ。
わざわざ連れてきてもらって、すまねェな」
そう言って、金色のスーツを着た男は
シャチとペンギンに近づこうとする。
けどそれを、ヴォルフが間に入るような形でさえぎった。
「んん〜?どうしたんだい 久しぶりの家族の対面だ。
ガキどもも、家を出ていろいろと不安だったろうから、
早く中に入れて安心させてやりたいんだがねえ」
「……あんたに、こいつらを引き渡すわけにはいかんな」
「あん? 何言ってるんだい、じいさん。
もうボケちまってるのか?ああ……、
そうかそうか!なんの見返りも期待せず、
ガキどもを連れてくるなんてことはないわなあ!
いくら払えばいい?50万ベリーか?100万ベリーか?
便利な『道具』を運んできてもらったんだ。
報酬ははずんでやるよ!」
「道具、じゃと……?」
ピリッとヴォルフの空気が変わって、
それは初めて感じる重たい空気だった。
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