困った









「好きです!付き合ってください!!」

「ごめんなさい」



なんて空気の読めない人なんだろう。

裏方作業が落ち着いている時は店頭に立つ事もあり、
お母さんと小さな女の子が私の作った洋服を買ってくれて
女の子が元気よく手を振ってくれてるのを
見送っていたら、横からいきなり大きな花束を持って
大声で告白してきたから反射的に断った。

だからか、相手はポカンと口を開けて
状況が追いついていないようだった。
お店が立ち並ぶ大通りで私と男は立ち尽くす。
この人は確かトッタとかいうベポと同じ所で働く
シャチ達と同い年くらいの男の子だ。



「えっと…え…?」

「ごめんなさい。付き合えないです。」

Σ「え!?そんな…!こんなに好きなのに!」

「気持ちは嬉しいけど、」

「アメリー!お客さーん!」

「ごめんなさい 仕事中だから…!」

「じゃあ終わるまで待ってるよ!」

Σ「え!?もう返事したよ!?」

「諦め切れるわけないだろ!?
町で見かけた時からずっと好きだったのに!」



なんて自分勝手な人なんだ!

お店に戻ったらオーナーにも同情されて
裏口から帰るように気を遣ってくれたけど、
そりゃ3年も同じ場所で働いていれば
相手もこっちの動きが分かるみたいで
まんまと裏口を出た瞬間に待ち構えられていた。



「お疲れさまアメリ!」

「トッタ 待っててもらって悪いんだけど、
私の気持ちは変わらないよ。
そもそもお店と家の往復だから付き合う時間ないよ」

「仕事終わりにちょっとでも話したり出来ればいいんだ!」

「それも無理なんだってば!
ヴォルフの手伝いもあるし、
自分のやりたい事もあるから早く帰らなきゃ!」

「なんでよ!こんなに好きなのに!」

「トッタの分からずや!」

「アメリの方こそ、あんなに笑顔を見せてくれたのに
思わせぶりな事をしてヒドイじゃないか!」

Σ「お、思わせぶり…!?」

「それで皆んな君に本気で好きになるのに
皆んなを振り回してヒドイじゃないか!」



トッタの言い分は理解し辛いけど私にも非があったらしい。
でも相手が笑って話しかけてくれたら
ローじゃあるまいし、無愛想にならないじゃん!
皆んなに笑って話してるんだから
トッタにだけ特別にしてないのに
どうしてこんなに責められるのだろう。

私はさすがにムカッときて
強引にでも家に帰ってロー達に聞いてもらおうと
トッタの横を通り過ぎて表通りに出ようとした。



Σ「ま、待ってよアメリ!」

「きゃ…!」



強引に横を通ると、急に腕を掴まれた。
ビックリしてバランスを崩すと
裏口から表通りに出る道は階段だったから、
ずるりと足を滑らせて転がって
そのまま表通りに倒れ込んだ。



Σ「誰か階段から落ちたぞ!?」

Σ「アメリじゃないか!大丈夫か!?」

「その上にいるのはトッタか!?何やってるんだ!」

「コラ!逃げるな!捕まえろ!」



階段から落ちたからか頭がぐらぐらして意識が朦朧とする。

その揺れる視界の中でトッタはビックリしたのか
あれだけ好きだと言ってくれていたのに
倒れた私を見て逃げてしまっていた。ヒドイ。
全身が痛くて痛くて特に左足が痛い。
病院行かなきゃダメだ…お医者さん呼ばなきゃ…



「ロー…」



いるか分からない人の名前を消えそうな声で呼んだ。
思い出すのもぼんやりで、
今日が非番だったかも思い出せない。
ぼんやりとした視界も見辛くなってきて
目を閉じたくなってきた時、



「アメリ!!」



ローの声がハッキリと聞こえた。



「ロー…?」

「アメリ!俺だ!今担架持って来て運ぶからな!」

「ロー…全部痛い…私どうなってる…?」

「頭に血が出てるのと全身打撲だろうな」

「…そっか…だから視界悪いんだ…
あとね…左足も痛いの……だから…優しく運んでね…?」

「俺は医者だぞ 当たり前だ。
そんだけ意識があれば大丈夫だな。」

「うん…でも…周りがぼんやりして気持ち悪いから
目は閉じちゃうね…」

「ちゃんと起きてろよ…!」

「うん…分かった……」



私は起きようと思ったけど、
目を閉じた瞬間 ローの声も全く聞こえず
そのまま眠ってしまった。













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