白い町








洞窟で見つけた男の子はガツガツとスープを食べていた。
相当な空腹だったとはいえ、
自分が作ったものをこんなに嬉しそうに食べてくれると
見ている方も嬉しくなってしまう。
今はヴォルフが沸かしたお風呂に入っている。



「お前を思い出すわいアメリ」

「私は食べたの3杯くらいだよ。」

「1杯も2杯も変わらんじゃろ」



ヴォルフはそう言って男の子の着替えを用意していた。
私たちも食事を終えて洗い物まで済ませると
男の子はお風呂から上がって
私含めて暖炉の前で話を聞く事にした。



「息子の服じゃ。とっておいてよかったわい。
古いもんじゃが、とりあえずは支障なかろう」 



ヴォルフが用意した服に袖を通した男の子は
サイズがぴったりだった。
私はヴォルフの少し後ろに座って
ヴォルフと男が向き合うように座っていた。



「あのよ」

「なんじゃ」

「もしかして、あんた、おれを助けてくれたのか」

「ふんっ!アメリが慌てて帰ってきて
何事かと思えば直ぐ来いと外に連れ出されて
ぼろぼろのガキがひとり倒れておった。
アメリが助けてくれと言うから
連れ帰って、ベッドに寝かせてやっただけのことじゃ」

「そうか……」



男の子は少し申し訳なさそうな感じで視線を落とすと
私の方に目線を向けてきた。



「……ありがとう。」

「どういたしましてっ!
焦げた魚より美味しいもの食べれたでしょ?」

「ああ…じいさんも、
助けてくれた事には感謝してやるよ。」

Σ「言い方!」

「かっ! どこまでも可愛げのないガキじゃ!
坊主、世の中はギブ&テイクじゃ。
お前はワシにひとつ借りができた。それは分かるな」

「ああ」

「だったら、お前のことを話せ。
それでこの貸しはチャラにしてやるわい。
……こんな季節に、子どもがひとり洞窟で倒れとるなんて、
何か事情があるんじゃろう。」

「……」



ヴォルフがそう言うと男の子は私の方を見た。



「話し難いなら私お風呂入ってるよ。
2人でゆっくり話して?」

「いや、いい。話す。」

「いいの?」

「ああ、お前も恩人の1人だ。」



そう言って話し始めたとき、
私はどういう表情をすれば分からなかった。

男の子は白い町"フレバンス王国"の生まれだった。
その国は私もよく知っている。
父や母も貿易で白く綺麗な食器を取り寄せていた。
でもその原料となる珀鉛の病気が流行ったのをきっかけに
その綺麗だった食器は直ぐに割って捨てられた。

珀鉛病が流行り病だと噂が広がって隔離されて
国内で戦争が起きて沢山の人が死んだ悲劇の国。
そんな国に対して父と母は腫れ物が無くなった安心で
人事のように笑っていた顔が目に浮かぶ。

男の子は優しい人に出会えて病気も治ったらしいけど、
きっと心傷は消えない。
今でもきっと絶対恨んでる。
国を捨てた王族たちをきっと。



Σ「おまっ、なんで泣いてんだよ!」

「えっ…!?あ…!」



男の子が話し終えると私に気付いて声を上げた。
いつの間にか涙が溢れていたみたいで
私自身もびっくりして慌てて服で涙を拭う。



「ご、ごめん…!君の方が辛いのに涙なんか…!」

「っ……!」

「なるほどな。ガキはガキなりに、
いろいろ背負って生きているということか」

「ガキって言うんじゃねェ。
トラファルガー・ロー、それがおれの名前だ」

「ローか、なかなかイカす名前を授かったな。
で、つまるところ今のお前は天涯孤独の身で、
行先も目的もないと、そういう理解でいいのか?
どうしたいと思ってるんじゃ」

「分からねェよ」

「だったら、」

と言ってヴォルフは膝をバンと叩いた。



「お前の目的、やりたいことが見つかるまでは
この家に置いてやるわ」

「い、いいのか!?」

「ただし、ひとつ覚えておけ!
人生は常にギブ&テイク!これがワシの信念じゃ! 
お前にはワシの労働力になってもらう!
洗濯や掃除、畑の管理!それとワシの仕事の手伝い!
やってもらうことは山ほどあるぞ!
ワシは安全な暮らしをお前に与え、
お前はワシに労働力を提供する!それでかまわんな!?」



出た…ヴォルフのギブ&テイク論。
ヴォルフは優しいのにそれを素直に出さない。
ローもそれが面白かったのか初めて笑顔を見せてくれた。



「ようやく、笑顔を見せたな」



ヴォルフもそう言って笑ってた。



「ん?そういや、じいさんの仕事ってなんなんだ。
強盗の手伝いなんてのはごめんだぜ」

「バッカモン!このワシを誰だと思ってるんじゃ!
そんなしょうもないことをするわけがなかろう」

「誰だと思うも何もおれはあんたのこと、
なんも知らねェよ」

「おおう……そうか、自己紹介も済ませておらんかったな。
よし、耳をかっぽじって、よおく聞けい!
ワシの名はヴォルフ!
稀代の天才発明家、ヴォルフ様じゃ!!」

「天才発明家?あんたが?」



ローはやっぱり直ぐには信じなかった。
ヴォルフのファッションセンスが詐欺師みたいだもん。
この後もヴォルフの発明品紹介が長引きそうだから
私は席を外して2人に温かいお茶を淹れる事にした。











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